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2019 年度 実施状況報告書

動的再結晶マルチスケール有限要素法に基づくAl合金板材のプロセスメタラジー

研究課題

研究課題/領域番号 19K04098
研究機関大阪工業大学

研究代表者

倉前 宏行  大阪工業大学, ロボティクス&デザイン工学部, 准教授 (90298802)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード結晶塑性有限要素法 / 熱間異周速圧延 / マルチスケール解析 / 再結晶 / 結晶集合組織発展
研究実績の概要

自動車車体用(ボディパネル用)アルミニウム合金について,高強度と高成形性能を兼ね備えた新規板材創製のための,非線形の熱・弾/結晶粘塑性マルチスケール有限要素法に基づくプロセスメタラジー手法の開発に着手した.熱間加工時の動的再結晶解析を実現するため,再結晶温度を超える高温塑性変形,ならびに熱負荷による結晶集合組織発展の解析コードを開発した.
本手法の妥当性を確認するため,熱間異周速圧延の圧延温度と上下ロールの周速比を変えて解析を行い,圧延過程の集合組織発展と圧延後の集合組織に対する深絞り性と塑性異方性を検証した.ロール直径350 mmによる熱間圧延400℃および温間圧延300℃について,熱間粗圧延後の結晶方位を初期方位として与え,板厚6 mmから圧下率50 %の3 mmまで板厚減少させる.上下ロールの周速比が等しい等周速圧延と異周速比2.0の異周速圧延の解析を行い,結晶集合組織発展を比較する.初期方位としては,A6022の熱間粗圧延後の厚さ6 mmの板材をSEM/EBSD (scanning electron microscope/electron backscatter diffraction)計測し,3次元代表体積要素RVE (representative volume element)として6×6×6の計216点の結晶方位を微視結晶体の3×3×3要素分割の有限要素モデルの積分点に与えた.
これにより,圧延後の結晶方位について成形性(深絞り性)の検討を行い,圧延条件による差違を確認した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

圧延条件による板断面のせん断ひずみ分布を比較し,等周速圧延は板上下表面においてせん断支配,板厚中央において圧縮変形支配であるのに対し,異周速圧延においては板厚方向全体にわたり強いせん断ひずみが導入されていることを確認した.圧延後の中層部における集合組織をODF (orientation distribution function)解析し,圧延条件(圧延温度および異周速比)により異なる集合組織発展が確認できた.具体的には,熱間および温間等周速圧延においては,Cube方位{001}<100>,Copper方位{112}<111}およびBrass方位{110}<112>の集積が確認され,熱間および温間異周速圧延においてはγ-fiber {111}<110>~{111}<112>およびα-fiber {001}<110>の発達が確認された.特に熱間異周速圧延においては,α-fiber {001}<110>が強く発達していることが確認できた.
圧延後の板材の成形性(深絞り性)を評価するため,圧延後の中層部における集合組織を初期方位として,直径100 mmの球頭ポンチによる深絞り解析を行った.等周速圧延後と異周速圧延後を比較すると,耳が発生する角度およびr値分布が異なり,塑性異方性の差違が確認できた.平均r値 は,等周速圧延に比べ異周速圧延が高くなるが,熱間異周速圧延の面内異方性 も大きいことが確認された.これは,異周速圧延によりγ-fiber {111}<110>~{111}<112>の集積によりr値は向上するものの,熱間異周速圧延では同時にα-fiber {001}<110>が強く発達するためであると考えられる.

今後の研究の推進方策

板材創製過程における種々の塑性加工や調質条件のうち,たとえば圧延段数,ロール経,ロール周速度や周速比,圧下率,熱処理温度と時間を設計変数としたマルチスケール有限要素解析を行う.このとき創製後の板材について,材料特性(たとえばLankford値,深絞り加工における耳発生,曲げ加工性,スプリングバック量)を目的関数とする多目的・大域的離散最適化問題を定式化し,離散最適化アルゴリズムや機械学習により最適パラメータを導出する.ここで設計変数は膨大であり,目的関数評価のため多数回の非線形マルチスケール解析が必要なことから,PCクラスタによる並列最適化手法を採用する.

次年度使用額が生じた理由

予定していたPCクラスターノードの購入金額が安価であったこと,研究成果発表のための出張旅費が台湾での開催で予定金額より安価で済んだことなどにより,使用額に残額が生じた.次年度以降は,さらにPCクラスターノードの増強,および大規模な有限要素メッシュを構築するためのメッシュ切りソフトウェアを導入し,さらなる研究の進展に努める計画である.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Development of Multi-scale Thermo-coupled Elastic-crystalline Plasticity Finite Element Code to Predict Dynamic Recrystallization2019

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Kuramae, Eiji Nakamachi, Hidetoshi Sakamoto and Yasunori Nakamura
    • 学会等名
      Asian Pacific Congress on Computational Mechanics (APCOM)
    • 国際学会
  • [学会発表] 動的再結晶を考慮したマルチスケール結晶塑性有限要素法によるAl合金板材の熱間圧延解析2019

    • 著者名/発表者名
      倉前宏行, 仲町英治
    • 学会等名
      日本機械学会 第32回計算力学講演会

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公開日: 2021-01-27  

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