研究実績の概要 |
本研究においては,主に自動車車体用(ボディパネル用)アルミニウム合金について,高強度と高成形性能を兼ね備えた新規板材創製のための,非線形の熱・弾/結晶粘塑性マルチスケール有限要素解析コードを開発した.これを用いて,アルミニウム合金板材の創製過程の熱間圧延において,塑性変形と熱負荷が同時に発生するときに生じる動的再結晶を積極的に利用し,材料機能発現のための微視結晶形態制御を行い,板材創製過程における加工プロセス条件のパラメータ最適化計算を行った. 本年度は,マクロ・ミクロの2スケールの巨視的な塑性変形と微視的な結晶集合組織発展を同時に表現可能なマルチスケール有限要素解析コードにミクロスケールにおける結晶塑性解析熱的負荷による再結晶を解析可能にし,これを用いてアルミニウム合金板材の熱間異周速圧延の最適化条件を求めた.圧延後の板材の成形性(深絞り性)向上を目的に,応答曲面法によりLankford値(r値)を最大,かつ面内異方性を最小ととする圧延温度および異周速比を求めた. 圧下率(板厚減少率)を50%とし,ロール直径350 mmの板圧延によって板厚6 mmから3 mmまで板厚減少させる板圧延を想定し,上下ロールの周速比ν = 1.00の等周速圧延に加えν = 1.25, 1.50, 1.75, 2.00の異周速圧延,圧延温度T = 250, 300, 350, 400 ℃を組み合わせた計20通りのマルチスケール解析を行った.この結果に基づき,平均r値が高く面内異方性が低くなるような多目的関数を設定し,応答曲面法を用いて最適圧延条件探索を行った結果,最適条件としてν = 1.484, T = 250℃を得た.最適条件を用いてマルチスケール解析を行い最適な微視集合組織を得た.このときの平均r値および面内異方性はそれぞれ0.914, 0.067であった.
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