水素社会の実現には,水素機器に利用される材料の水素脆化(水素によって材料の強度特性が劣化する現象)を的確に把握し,水素機器の安全性を十分に保証する必要がある.特に,引張強さが1000MPa程度を境に材料の水素脆化挙動が顕著に変化するため,この引張強さ付近の水素脆化挙動を注意深く調査することが重要である.本研究では引張強さ1000MPa程度の2種類のステンレス鋼の水素脆化挙動を調査した.その結果,水素脆化のメカニズムを1つのメカニズムで説明することは困難であることを示すとともに,水素脆化を起こしやすい強化機構との関連についての知見を得た.これらは今後の材料開発に役立つ有益な結果といえる.
|