研究課題/領域番号 |
19K04101
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 文基 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (30207138)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多軸工作機械 / 誤差モデル / デジタルツイン / 工作機械モデル / 加工シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究は,個別多軸工作機械の特性を生かした工程設計のために必要な加工事例取得に関し,仮想(コンピュータ)空間に多軸工作機械に対するデジタルツインを構築し,シミュレーションによる事例を取得する方法を提案することを目的としている. 2019年度は,提案する方法の基本的考え方を機械学会生産加工・工作機械部門講演会にて発表,提案に対する評価を得た.さらに.実施事項Ⅰである多軸工作機械モデルと加工形状シミュレーションによるデジタルツインの構築を実施した. 実空間とサイバー空間とを連携するために,多軸工作機械機構モデルを拡張した誤差を含む多軸工作機械モデルの構造を提案するために,最新の研究並びに規格等で提案されている誤差モデルの基本的構造を明らかにするとともに,購入備品である多軸工作機械を例題として,誤差モデルの構築を行った.その結果,幾何学的誤差に関して,代表的なモデルである形状創成関数に基づくモデルと規格等で提案されている誤差モデルとの関係性を明らかにし,統一的な誤差モデルとして形状創成関数に基づくモデルを採用することを提案した. 次に,工作機械モデルに基づき加工事例を高速高精度に導出する機能を実装した.これまで申請者らが提案した工具形状と加工運動の数学的な解析方法に基づき,提案した工作機械誤差モデルを用い,加工形状を導出するアルゴリズムをプロトタイプ実装した.なお,対象は購入備品である多軸工作機械である.また速度・精度に関して検討を行い,十分高速であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下に説明するように,一部2019年度の予定が実施できていないのが理由である. 多軸工作機械モデルは,誤差モデルとの統合が行われていない.多軸工作機械モデルの基本となるモデルであるISO 10303-105は,2019年に改訂されそれの把握が十分なされていないので,2020年度も引き続き検討を行う必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,2019年度の積み残しである,多軸工作機械モデルと誤差モデルとの統合モデルの提案と,実施事項Ⅱである加工履歴の蓄積と実加工形状計測の自律的フィードバックによるデジタルツインの実行機能の実現を主に行う予定である. まず,多軸工作機械モデルの基本となるモデルであるISO 10303-105の内容を理解し,サンプルデータの作成と,統合に必要な情報要件の洗い出し,モデルの提案と実証データの作成を行う. 次に,実加工形状を測定して得た測定情報と加工プロセス情報とを関連させることが可能な加工プロセス・加工形状関連型履歴データベースの構造を明らかにする.加工プロセス情報を生成するためのNCデータ解析方法を申請者らの提案に基づき,提案する. さらに,実加工形状の測定に基づく工作機械モデルの修正を行う機能を提案し,デジタルツインの自律的フォードバックを行う.購入備品である測定機を用いて測定した形状から, デジタルツインに含まれる誤差パラメータを導出する方法を,申請者らの提案に基づき提案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,今年度購入予定のPCを既存のもので代用しその分工作機械の費用に充てる予定であったが,予想よりも工作機械の費用が高くなかったことと,英文論文投稿計画が,コロナウイルスの関係で先送りになったため,英文校正費用が掛からなかったことにある. 使用計画としては,精密計測システム及びパソコンをより良いものにするべく,その購入に充てる予定である.
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