研究課題/領域番号 |
19K04107
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
松田 昇一 琉球大学, 工学部, 准教授 (90390567)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アーク溶接 / GMA溶接 / 磁気制御 |
研究実績の概要 |
TIG溶接に外部磁場を付加した場合、溶融池に流れる電流と付加した磁場の相互作用により電磁力が発生する。我々はその電磁力を用いて、通常溶融金属が垂れ下がり、アンダーカットや垂れ落ち等の溶接欠陥が生じやすい入熱過大の溶接条件においても、健全なビードを得ることが出来た。 本研究は、ガスメタルアーク(GMA)溶接に外部磁場を付加する新溶接法の研究である。一般的にGMA溶接はTIG溶接より溶接速度が10倍以上、溶接電流は2~3倍程度大きい高効率な溶接法であるが、溶接ワイヤが電極を兼ねていることから、熱源が時間的・空間的に変動するため、アークが不安定で、スパッタが発生しやすくなり、溶接欠陥が生じやすい欠点がある。そこで、GMA溶接に外部磁場を付加することにより、溶融池の流動およびアークの挙動を制御できれば、高効率で・高品質な溶接の実現が期待できる。 令和元年度は、始めに新しいGMA溶接電源購入し、実験装置構成を大幅に変更した。GMA溶接はTIG溶接と比較して、溶接速度や入熱が大幅に大きくなることから、トーチおよび試験片の固定ジグを大幅に作り替えた。また外部磁場を付加する磁極も入熱が大きくなることから、サイズを大きくした。試験片を固定し移動させる台車は、当初現存の物より稼働距離が大きく速度が大きい物を手配する予定だったが、納期および予算的に難しかったため、令和元年度は既存の物を利用した。 既存の物を一部併用し、実験を行った結果、まだ限られた条件ではあるが、磁場を付加することにより大幅にスパッタが減少し、ハンピングビード等の欠陥を大幅に抑制することができた。またアークおよび溶融池の可視化結果より、磁場を付加した場合、アークの振動が大幅に抑制され、電極から溶融池への溶滴移行が安定することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、新規に購入したGMA溶接電源と大幅に作り替えた実験装置を用いて、予備的な実験を行った。GMA溶接はTIG溶接と比較して、溶接速度や入熱が大幅に大きくなることから、実験条件が大幅に変わるため適正な条件を調べるのに時間を要した。しかしがなら限られた条件ではあるが、通常のGMA溶接ではハンピングビードが発生し、スパッタが多く発生する条件において、磁場を付加することにより大幅にスパッタが減少し、ハンピングビード等の溶接欠陥を大幅に抑制することができた。 またアークおよび溶融池の可視化結果より、磁場を付加した場合、アークの振動が大幅に抑制され、電極から溶融池への溶滴移行が安定することが明らかになった。なおその抑制および安定の詳細メカニズムに関しては次年度の課題である。 令和元年度の成果は、令和2年度前半の研究結果を合わせて2020年度9月の溶接学会秋季大会で発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は前年度の研究結果を踏まえて、最適な溶接条件を調べる。また溶接速度を大きくするために新たに試験片を移動させる台車を購入し、実験条件の範囲を広げる。さらに外部磁場が溶融池の流れおよびアーク(溶滴移行形態を含む)に与える影響を調べるために、溶融池およびアークを詳細に可視化する。また溶融池の温度分布を測定することにより、外部磁場が溶融池の温度場に及ぼす影響を明らかにする。これらの溶融池の流動およびアークの挙動の可視化結果、溶融池の温度分布の測定結果より、外部磁場による溶接欠陥抑制メカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置の大幅改修に時間を要したため、令和元年度購入予定の試験片を固定し移動させる移動台車の仕様決定が遅れ、納期および予算的に年度内の購入が出来なかった。移動台(約43万円:制御装置込み)は令和2年度に購入予定である。
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