研究課題/領域番号 |
19K04114
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研究機関 | 光産業創成大学院大学 |
研究代表者 |
楠本 利行 光産業創成大学院大学, 光産業創成研究科, 助教 (60715051)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フェムト秒超短パルスレーザー / レーザー加工 / 焼結ダイヤモンド / エンドミル / 金属切削 / ラマン分光 |
研究実績の概要 |
2020年度は、①焼結ダイヤモンド(PCD)による切削用工具成形技術の開発、および②ラマン分光計測装置の光源部分の開発を実施した。①に関しては、フェムト秒超短パルスレーザーによる刃付け技術の開発を行い、刃先丸み0.7um前後と1um以下の刃付け技術開発に成功した。これは、使用したPCD粒径が0.5umであることを考慮すると、ほぼ加工限界である。この刃先丸みを持つ切削工具で被切削材料として樹脂やCFRPなど樹脂を含んだワークを切削した場合、加工面が滑らか、バリが少ない、ワークの溶けがないなど加工品質が良好な切削を実現できる。これは、産業化を考えた場合に非常に重要である。②に関しては、ラマン分光計測装置の光学系の最適化を行うことでSN比の3割の改善に成功した。これにより、計測時間を半分近くまでできるなど、大幅な改善が期待できる。この計測装置を用いたPCD工具の刃先周辺のダイヤモンド残量(ダイヤモンドと、刃付け加工による熱影響部などの変質層との割合)を定量評価する手法を改良した。 2021年度は、2020年度の成果を用いて成形したPCDエンドミルと、従来手法である油放電加工によるPCDエンドミルの2種類を用いて、銅板(予定)の切削を実施する。そして、刃先丸みおよびラマン分光計測による刃先のダイヤモンド状態の切削距離依存性を明らかにする。これを解析することで、PCD工具における刃付け加工方法、刃付け時の刃の空間形状およびダイヤモンドの状態がPCD工具寿命にどのように影響を与えるかを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、①焼結ダイヤモンド(PCD)による切削用工具成形技術の開発、および②ラマン分光計測装置の光源部分の開発を実施した。具体的に以下に示す。 ①に関しては、実際の工具としてオーエスジー製の交換式エンドミルを選定し、その交換用チップへのPCD板材のロウ付け、油放電加工によるPCD板材の荒取り成形、およびフェムト秒超短パルスレーザーによる最終刃形成の技術開発を実施した。その結果、刃先丸み0.7um前後と1um以下の刃付け技術開発に成功した。これは、実際のPCDに内包されるダイヤモンド粒子の粒径が0.5umであること、今回のフェムト秒超短パルスレーザーの波長が800nmであり、PCD内のダイヤモンドではなくバインダーであるコバルトが主に吸収される加工であることから考察すると、現在のフェムト秒超短パルスレーザー加工方法ではほぼ加工限界に近いと考えれらる。この刃先丸みを持つ切削工具で被切削材料として樹脂やCFRPなど樹脂を含んだワークを切削した場合、加工面が滑らか、バリが少ない、ワークの溶けがないなど加工品質が良好な切削を実現できる。これは、産業化を考えた場合に非常に重要である。 ②に関しては、2019年度に開発していたラマン分光計測装置のワーク照射部分の光学系を再検討した。具体的には、光源の位置出し精度向上用治具の構築など改良することで信号強度を3割増大することに成功した。これにより、SN比が3割改善された。この計測装置を用いたPCD工具の刃先周辺のダイヤモンド残量(ダイヤモンドと、刃付け加工による熱影響部などの変質層との割合)を定量評価する手法を改良した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、PCDを用いた切削工具による金属板切断加工時の刃先丸みおよび刃先付近のダイヤモンド量割合を計測し、それら定量評価値の切削距離および加工方法依存性から、PCD切削工具の寿命との相関を明らかにする。 具体的には、2020年度に開発したPCDエンドミルに対する刃付け方法として、フェムト秒超短パルスレーザーおよび油放電加工の2種類を実施する。それら2種類の方法で刃付けしたPCDエンドミルを銅板を切削する。なお、被切削ワークである銅板は予定である。その際の刃先丸みの切削距離依存性を計測する。また、そこからいくつかの加工距離に対してラマン分光による刃先におけるダイヤモンド残量の切削距離依存性を計測する。得られた結果から、PCD切削工具としての寿命と刃付け時の加工方法、刃先丸み、および刃先のダイヤモンドの状態との相関を明らかにする。
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