協働型の人型双腕スカラーロボットによるグラスプレスハンドリングに取り組む研究の最終年である.人サイズを対象にしているので,作業現場でも人が多用する300~500mm(厚さ20mm程度)の長方形作業プレートを用いることにした.すなわち双腕でプレートを保持して,面外旋回および水平面内の操り動作に基づき,プレート上にボールの転がり運動の創成に取り組んだ.重力に基づく面外旋回運動によるプレート上のボールの運動応答の周波数特性はローパスフィルター的であり,慣性に基づく水平面内の運動応答のボールの運動の周波数応答はハイパスフィルター的となる.したがってプレート上にボールの任意のグラスプレスハンドリングでの運動創成には,対象となる運動に対して適切に面外および面内のプレート操りが必要であることが判明した.ただし協働ロボットであるため,ロボットアームに安全確保のために設定された上限力を超えない範囲でこれらの運動の組み合わせを検討する必要があり,特に水平面内の運動により生じる慣性力の制約が大きいことも判明した.さらに高い周波数帯を対象とするプレートの面内操りでは,双腕のマスター腕とスレーブ腕の特性差も無視できない場合が生じることも判明した.これらの成果に基づき,双腕でプレートを操ることで,プレート上に存在するボールなどの物体に直接触れることなく,ハンドリングが可能なグラスプレスハンドリングの技術の可能性を示すことができた.
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