研究課題/領域番号 |
19K04117
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
村田 順二 立命館大学, 理工学部, 准教授 (70531474)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高分子電解質 / 窒化ガリウム / 研磨 / 微細加工 |
研究実績の概要 |
令和2年度では以下の研究に取り組んだ。 (1)前年度までに製造した不織布を基材とする高分子電解質/酸化セリウム粒子の複合化研磨パッドを用いて電解条件が研磨レートおよび表面粗さに与える影響を評価した。定電流モードで電解を行い生じた酸化膜を砥粒に同時に除去する加工機構を採用した。電解電流に対して研磨レートはリニアに向上するが、電流値が一定の値よりも高くなると、研磨レートの向上率が低下することが確認された。高電流では電解酸化速度が酸化膜除去速度よりも高くなるためであると考えられる。また、電解にデューティーサイクルを導入した結果、総電荷量は一定であってもデューティー比が大きいほど研磨レートが向上することがわかった。表面粗さについては、機械研磨後のGaN表面の粗さ(Ra:100 nm)を高速に低減できることが明らかとなった。 (2)開発している新規研磨技術を難加工性材料であるSiCの平滑化への応用を行った。ここでは、上記(1)で述べた複合化研磨パッドを用いて電解を行い、生じた酸化膜を酸化セリウムによって除去し、平滑化を試みた。その結果、現在のところ判明している最適化された電解条件下において、Ra: 50 nm程度の表面粗さを15分の研磨によってRa: 1nm以下にまで低減できることがわかった。また、研磨レートは6 um/h程度であり従来のCMPよりも大幅な向上を達成した。 (3)高分子電解質により電解液フリー電気化学的な表面処理技術は、研磨加工だけにとどまらず、さまざまな精密加工へと応用を模索した。高分子電解質膜にSolution casting法やホットプレス法によってパターニングを施すことによって、電気化学的インプリントリソグラフィへと応用できることを明らかとした。これによりGaNをはじめとしSiやSiCに対して、ハニカム構造やドット構造などさまざまな微細パターン加工を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GaNの電解援用CMP技術において、従来技術よりも高い研磨レートで加工ができることを見出した。また、表面粗さも効率的に改善できることを明らかとしていることから、おおむね順調に研究が進んでいると判断できる。一方で、表面粗さがナノレベルにまで低減すると、結晶の電気物性のばらつきに依存するテクスチャがGaN表面に形成されることが確認された。これは令和3年度以降に解決すべき課題として認識している。 本研究課題において開発している技術は、GaNの研磨だけにとどまらず、SiCの研磨や電気化学的インプリントリソグラフィへの応用へも波及を見せており、研究課題として広がりを見せている。 なお、令和2年度の研究成果をベースに、国内学会発表を3件、国際会議発表を2件、学術論文発表を1件行った。また、共同研究を行っているGaNウェハサプライヤーと特許出願(優先権出願)を1件行っている。
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今後の研究の推進方策 |
上記「現在までの進捗状況」において述べたように、GaNウェハの表面粗さに結晶の電気特性に依存した微細な凹凸が形成されるため、これを除去する方策を模索し、サブナノメートルの表面粗さの達成を目指す。具体的な戦略としては、電解条件を段階的に変更することである。表面粗さが比較的大きい初期の研磨段階においては、電解電流を高くすることで、高研磨レートで加工を行う。その後、表面粗さが数ナノメートルの範囲に入った段階において、電解条件をマイルドにして、表面粗さを重視する加工を行う。また、酸化セリウム粒子は現在は不織布に固定した固定砥粒方式を採用しているが、スラリーとして供給する遊離砥粒方式によって、作用砥粒数を高くすることでより優れた表面粗さの達成を目指す。さらに、電解質膜の寿命の評価を行うとともに、より持続性のある研磨を実現するため、電解質膜の保持方法を探索する。本加工法がウェハ製造プロセスにおいて、もっとも有効に採用できる加工工程を見出す。ここでは、機械研磨後の高速ダメージ除去工程への適用や、最終仕上げ研磨工程への適用などが考えられ、より適したプロセスへの実装を目指した加工条件の最適化を図る。
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