本研究では、固体高分子電解質膜を用いた新たな電気化学的機械研磨法を開発し、ワイドギャップ半導体基板表面の高効率平滑化を目的としている。固体高分子電解質が液体電解質を代替し、薬液を使用せずに化学的安定性の高いワイドギャップ半導体表面を電気化学的に酸化できることを明らかとしている。電解によって生じた酸化膜を砥粒によって除去し、これを繰り返すことで高能率な平坦化加工を可能とする。得られた研究成果を以下に示す。 ① 固体電解質/砥粒含有複合研磨パッドの試作:不織布基材に対して固体高分子電解質と砥粒を含有させたパッドを着想し、その試作を行った。砥粒はアルギン酸ゲルを結合剤として不織布に固着させ、ついで高分子電解質分散液を含浸、乾燥することによって製造した。また、製造したパッドの耐摩耗性を評価し、研磨に応用可能であることを確認した。 ② 材料除去速度の評価:電気化学機械研磨中の電解電流や機械加工条件が材料除去速度に与える影響を評価した。材料除去速度は電解電流の増加に伴い、向上することがわかった。しかし、一定以上の電流では材料除去速度が飽和することがわかった。これは加工物表面に生成する酸化膜の除去速度が低いためである。そこで、研磨圧力や研磨プレートの回転速度(機械条件)を変化させて研磨実験を行ったところ、材料除去速度は機械条件に比例して向上し、ファラデーの電解の法則によって計算される理想的な速度である約15 um/hが得られた。これは従来研磨技術のおよそ10倍の速度である。 ③ 表面の評価:加工物表面の化学組成をX線によって分析した結果、加工条件によって酸化膜の残留が見られ、これが表面粗さに影響を与えることを見出した。最適な条件により加工を行った結果、数分間の研磨で表面粗さを50 nmから0.7 nm Sa程度にまで低減でき、研磨欠陥のない表面が得られた。また、他材料への適用を行った。
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