光造形法ではその素材は紫外線硬化樹脂である.光造形法で得られた部品を実用に供するためには機械的な強度を向上させることが必要である.本研究は炭素繊維を配向して強化した部品の製作方法を開発することを目的としている. 令和元年度(2019年度)は電界を利用した方法によって造形物の厚さ方向に炭素繊維を配向した.銅板上に0.7mmの長さに切断した炭素繊維を置く.この銅板を陰極とする.陽極の銅板との間に直流電界を印加して炭素繊維を陽極板上に配向した.令和2年度(2020年度)は配向する炭素繊維の本数について実験により検証した.陰極に置く炭素繊維の本数を変えて電界を印加して配向後の本数を調べた.その結果,本数が少ないと配向しやすく,本数を増やすと炭素繊維同士が交叉してしまい配向が困難となった.造形物の強度を向上させるためには炭素繊維の本数が多いほうが良いので,どの程度まで多くすることができるかを実験で検証した.その結果,造形後の炭素繊維の密度は1平方ミリメートルあたり10本が,この方法では適切な値であった. 令和3年度(2021年度)は,配向の条件について検討した.配向した炭素繊維の角度を測定して角度の分布を得た.電極板に対して垂直に配向している炭素繊維の割合が高いほど適切な条件であると判断した.印加電圧については4000V程度,極板間隔について10mm程度が適切であった.配向の条件については,今後,さらに精査したいと考えている. 炭素繊維を配向した樹脂の引張試験は令和2年度に行った.試験片および引張試験装置は製作した.その結果,炭素繊維が30本程度でも引張強度は向上し,その向上の程度は体積則にしたがっていることがわかった.ただし現状は試験結果のばらつきが大きい.今後は試験結果を精査するとともに,炭素繊維の本数をさらに増加させて引張試験を実施する予定である.
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