研究課題/領域番号 |
19K04122
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
平尾 篤利 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70455111)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放電加工 / 深穴加工 / 微小径 / 軸成形 |
研究実績の概要 |
本年度,深穴放電加工における工具電極形状を検討した。ここでは,次の2つについて実施した。 (1)工具電極の形状が深穴放電加工におよぼす影響:本研究では,深穴放電加工において工具電極形状を検討した。ここでは,無垢の丸棒電極,ダンベル型形状電極,マドラー型形状電極,ドリル型形状電極およびDカット型形状電極を用いた。ドリル型形状電極の材質はHSSである。他の電極材質は銅である。これらの電極を用い深穴放電加工を実施した結果,ドリル型形状電極を用いた場合に加工深さを得ることができた。しかし,ドリル型形状電極の材質はHSSであるため,他の電極材質とは異なっている。そのため,銅を材質とした他の電極形状と比較して電極消耗量が大きかった。 (2)工具電極形状が極間雰囲気におよぼす影響:ドリル型形状電極およびDカット型形状電極を用い,側面からの直接観察を実施した。被加工物の前にアクリル加工槽を設置し,側面ギャップの気泡および加工屑の挙動を詳細に観察した。ドリル型形状電極の場合,電極の回転方向によって加工液の流入・流出が異なる。流出方向に回転させた方が,流入方向に比べより加工深さが得られた。流入方向に回転させた場合,気泡が加工液によって押され,気泡同士が合一する様子が観察された。一方,流出方向に回転させた場合,気泡は小さい状態で排出される様子が観察された。このような気泡合一や排出方法の違いが,加工結果の違いに大きく影響したものと考えられる。また,Dカット型形状電極は,小さな気泡がそのまま排出される様子が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,深穴放電加工時における側面ギャップを直接観察することで,加工停滞の要因について考察することである。そこで,深穴放電加工を模したアクリル板と被加工物を重ね合わせた加工槽を製作した。ハイスピードマイクロスコープを用い,透明なアクリル板側から側面ギャップを観察した。無垢の丸棒電極を用いた場合,放電によって発生した小さな気泡同士が合一し,大きな気泡を生成した。その結果,側面ギャップには常に大きな気泡で占有されていることが確認された。この時,加工屑は,側面ギャップと気泡境界に多く滞留していた。ダンベル型形状電極は,ダンベル軸が電極先端部より細く設計されている。このダンベル軸の領域は,加工液で満たされている。そのため,放電によって発生した気泡は,大きく合一することなく,加工液で満たされた領域内を上昇する。一方,加工時間の経過に伴って,側面ギャップの加工液は加工屑で徐々に黒くなることが観察された。気泡の排出は良好であるが,加工屑の排出は良好でないことがいえる。マドラー型形状電極を用いた場合,無垢の丸棒電極を用いた場合と同じ,放電によって発生した気泡は大きく合一した。しかし,ダンベル型形状電極の場合と同様に穴内部における側面ギャップの隙間が広い。大きく合一した気泡は,大きな隙間から容易に排出されていることが確認された。また,加工屑が気泡と一緒に排出されていることが確認された。そのため,加工時間が経過しても,側面ギャップの加工液は加工屑で黒くなることはなかった。これらのことから,側面ギャップの加工液の攪拌(加工屑および気泡の排出)が重要であることが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は,高アスペクト比の深穴加工を実現することである。高アスペクト比の加工を実現するには,極間に介在する加工屑および気泡を効果的に除去する必要がある。そのためには,実際の極間がどのような加工雰囲気となっているのかを詳細に把握することが重要である。これまでの結果から,加工屑は重力の影響によって下方向に溜まってしまい,異常放電を発生させる。特に微小径の深穴放電加工は,低エネルギー条件を用いるため極間ギャップが狭くなり,気泡および加工屑をより多く滞留させてしまう。深穴放電加工を実現するには,これら気泡および加工屑を効果的に排出させる必要があり,深穴放電加工にはガンドリル加工機のような主軸のX軸制御を検討する。また,シミュレーションによって気泡および加工屑を効果的に排出する電極形状を考案する。一方で,側面ギャップの加工液攪拌も重要である。穴内部の加工液を攪拌できる電極形状をシミュレーションによって検討する。最終的に,シミュレーションによって考案した電極を成形し,実際の深穴放電加工に適用し,その効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】今年度もコロナウィルスによる影響が大きい。国際会議,学会,研究打ち合わせが,オンライン開催,中止などとなった。展示会などの多くが中止となったため,次年度使用額が生じた。 【使用計画】 本年度,国際会議での発表を計画している。未だアジア圏では,コロナウェルスの影響があるため,参加費・旅費に関して不透明である。コロナウェルスが終息すれば,研究打ち合わせなどの旅費が必要となる。本年度,シュリーレン法を用いた単発放電発生時の密度勾配を観察できる光学系の構築を予定している。そのための,LEDライト,レンズ,などの周辺機器の購入を予定している。
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