研究実績の概要 |
本年度は液化二酸化炭素(CO2)及び液体窒素(LN2)を切削点へ噴射した際の工具刃先温度に及ぼす切削条件の影響を有限要素法により検討した.工具は超硬,被削材はチタン合金とし,切りくず厚さや切削抵抗は実験値を用いた.熱伝達係数hを1~10000 W/m2Kとし,切削速度80m/min,切込み0.075mm,境界温度20℃の条件ですくい面温度を求めたところ,hが1~1000 W/m2Kではほとんど変化がなく約820℃で,hが10000 W/m2Kのときで約790℃となる.最高温度についても同じ傾向で,熱伝達係数がすくい面温度に及ぼす影響は1000 W/m2K以下では小さい.乾式,CO2噴射,LN2噴射でのすくい面温度は,それぞれ約840℃, 約770℃, 約750℃であり,乾式時と比べるとCO2噴射時,LN2噴射時の温度は低い.温度差はそれぞれ約70℃,約90℃であり,CO2と比べるとLN2は,LN2自体の温度から想定される効果と比べると小さい. 送りを0.025~0.125mmとしたときの,乾式と比べた場合のCO2,LN2がすくい面温度に及ぼす影響は,送りが小さいほど大きい.乾式のすくい面温度に対する温度低下率は,送りが0.025mmのCO2の場合で約9%,LN2の場合で約13%であり,送りを0.15mmとするとCO2の場合で約7.5%,LN2の場合で約9%となる.冷却剤は切りくず自由面側を冷却することから,すくい面の冷却に対しては切りくずが薄いほど大きい.切削速度を10~120m/minとし,冷却剤噴射の影響を調べた.切削速度は低いほどCO2とLN2の効果が大きく,10 m/minではLN2噴射時のすくい面温度は乾式時と比べて約32%低下し,120m/minにおいては約8%低下する.低速ほど切りくずは長い時間冷却されることから,切りくずを通じての冷却効果が大きいと考えられる.
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