研究課題/領域番号 |
19K04126
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
水垣 善夫 九州工業大学, 大学院工学研究院, 嘱託教育職員 (50174016)
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研究分担者 |
吉川 浩一 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (90274547)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 機械工学 / 生産工学 / 工作機械 / 幾何偏差 / 四角錐台 / 機上計測 |
研究実績の概要 |
「研究の目的」5軸制御工作機械の組立て時の機構幾何偏差を同定し補正式を得ることで工作機械の性能を最大限に引き出すことを研究目的としている。機構幾何偏差の推定・同定の研究は従来から行なわれており、申請者らによる四角錐台加工利用の先行研究のなかで新たな課題として挙がってきたのが、複数の機構幾何偏差が結果的に同様な工具経路誤差ないしは加工面性状の歪みをもたらしており、個別に機構幾何偏差を同定し定量化するに至っていない点である。この研究背景を考慮し、円錐台・四角錐台形状を組み合わせた試験片形状を開発し、個別に機構幾何偏差を同定し定量化することを直接の目標としている。 「研究実施計画」数理的研究課題と実験的研究課題を想定しており、数理的研究課題では1)試験片形状の改良ならびに2)試験片設置位置の検討を挙げている。実験的研究課題では1)計測システムの機構設計ならびに2)計測システム製作を挙げている。 3年計画の初年度(2019年度)は数理的研究課題の1)および2)を優先的に実施予定とし、1)については四角錐台を連結した供試体について研究を行い相応の知見を得たが、2)については現有5軸マシニングセンタの構造上の制約から検討を進めることができなかった。その代わりに実験的研究課題1)を並行して行い、非接触式機上計測システムのラインセンサと工作テーブル上の水平面を用いた校正方法の具体的手順を開発した。現在までの進捗状況の欄で全体的な進捗状況を説明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
数理的研究課題1)試験片形状の改良では同じ形状の四角錐台を2個直角に連結した軸直交二連結四角錐台を供試体として考案し、加工する場合の工作テーブル駆動量の変化範囲を計算した。駆動量変化の大きい加工面が工作機械の精度検証に適していると考えられるからである。 四角錐台は80 mm角で錐面高さ20 mm、四角柱高さ10 mm、半頂角は15°から75°まで15°毎の5種類とした。半頂角45°以外の供試体は接続面に隙間ができるか干渉するため現実的には加工できないが、供試体の6錐面をフラットエンドミル側面加工で加工する場合の工作テーブルの駆動量(A軸B軸)の範囲を計算した。四角錐台単体と供試体を比較した結果、A軸駆動範囲に大きな違いは無かったが、B軸駆動範囲は四角錐台単体が可動域全体の13.2%に対して供試体は56.0%の変化を示した。半頂角75°の供試体の水平方向錐面を加工する時の駆動量変化が一番大きく、半頂角15°の供試体の駆動量変化が一番小さかった。この傾向はA軸駆動量変化についても同様であった。B軸駆動量変化の大きさだけで言えば供試体の軸直交二連結四角錐台が従来の四角錐台よりも適しているといえる。 数理的研究課題2)試験片設置位置の検討については、使用している横形5軸マシニングセンタの構造上、供試体の設置位置・設置方向が限定的であるため検討が進まなかった。その代わりに実験的研究課題1)機上計測システムの組立取付け誤差校正の研究を進めた。これは先行研究成果として試作した非接触式機上計測システムが設計とおりに組立・取付けられていない虞があるために行った研究である。機上計測システムは非接触式ラインセンサを直動させて錐面を走査する機構となっており、ラインセンサの取り付けに基づくA軸B軸C軸回りの姿勢角を校正する方法を検討し、有効な校正手順を開発した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の研究計画は、数理的研究課題2)試験片設置位置の検討ならびに実験的研究課題2)非接触式ラインセンサと角錐面の位置関係の校正を行い、3年目に総合的な機構幾何偏差同定実験を行う予定である。 数理的研究課題2)試験片設置位置の検討では現有5軸マシニングセンタの工作テーブルの大きさに限定されず、A軸B軸の回転中心からの距離と供試体の設置方向を変数として、工作機械幾何偏差がもたらす工具の位置決め誤差を算出する予定である。A軸B軸回転中心から距離が遠くなるにつれて工具の位置決め誤差が大きくなることは容易に推測できるが、供試体の設置方向によってはその位置決め誤差を相殺するように作用することも考えられる。設置方向は軸直交2連結四角錐台では4方向、四角錐台単体では2方向とするが、供試体形状の検討も並行して行うためその供試体形状に合わせて設置方向を考察する。A軸B軸の回転中心からの距離は3段階を想定している。 実験的研究課題1)で行った機上計測システムの校正は工作機械座標系に設置された水平面を用いており、校正の正確さが工作機械座標系に依存している。そのため外部測定系を用いて非接触式ラインセンサと角錐面の直角度を測定し、非接触式機上計測システムの再校正による正確さの向上を目指す予定である。工作機械外部からレーザ等の照射で計測する方法は誤差が大きくなる可能性が高いため、ラインセンサ光線方向と角錐面の直角度を測るための治具を考案し、外部測定系として工作機械工作テーブル上での測定と校正を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
採択後の研究計画精査により機上計測システムの構築を追加し、その研究分担者として吉川浩一准教授(九州工業大学)を追加した。直接研究費180万円を研究分担者の会計コードに移算し、超高速インラインプロファイル測定器(1,575,720円)を購入してもらい研究を進めてもらっている。機上計測システムの構築に関して必要部品見直しの過程で3万円程度の執行残が出たが、2020年度の研究開発で消耗品等の購入として利用予定である。
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