研究実績の概要 |
本研究課題の目的は5軸制御工作機械の組立て時の機構幾何偏差を同定し補正式を得ることで工作機械の性能を最大限に引き出すことであり、この点に焦点を当て、円錐台・四角錐台形状などを組み合わせた試験片形状を開発し、個別に機構幾何偏差を同定し定量化することが可能か研究開発を行う。3年計画の初年度(2019年度)は数理的研究課題1)試験片形状の改良、2)試験片設置位置の検討のうち、1)については四角錐台を軸直交で連結した供試体(以下、改良供試体と表記)について研究を行い相応の知見を得たが、2)については現有5軸マシニングセンタの構造上の制約から検討を進めることができなかった。その代わりに実験的研究課題1)計測システム機構設計を並行して行い、非接触式機上計測システムのラインセンサと工作テーブル上の水平面を用いた校正方法の具体的手順を開発した。また部分的ではあるが実験的研究課題2)計測システム製作に相当する非接触式機上計測システムの開発も実施した。2年度(2020年度)は、四角錐台単体と改良供試体を使って、工作物テーブルに設置する傾斜治具の角度が開発した機構幾何偏差校正方法に及ぼす影響を検証した。具体的には、A軸の幾何偏差1°が与える改良供試体錐面のY軸誤差を計算すると、工作テーブル上の傾斜治具角度を10°, 30°, 50°と増大させればYZ面に垂直な錐面のY軸誤差が大きくなり、傾斜治具角度を減少させればZXに垂直な錐面のY軸誤差が大きくなった。また四角錐台単体と改良供試体を比較すると、幾何偏差が存在する場合でも改良供試体のほうが四角錐台単体よりも加工試験に適していることがシミュレーションにより確認できた。3年度(2021年度)は、実際に加工実験を行い非接触式機上計測システムを使用した機構幾何偏差同定を行う予定であったが、研究代表者の所属機関退職に伴い事業廃止届を提出して承認されている。
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