申請者は2004年より水溶性加工液中に直径数μm~50μmのマイクロバブルを発生させたマイクロバブルクーラントを除去加工に適用し、切削工具および研削工具(砥石)の寿命が向上すること、工作物の表面粗さが改善することを明らかにしている。本研究では、nmオーダーのバブルの直径や密度を変化させて発生できるウルトラファインバブル発生器を開発するとともに、放電加工に最適なバブル条件を実験的および理論的に解明し、ウルトラファインバブル放電加工法の実用化を目指している。 ウルトラファインバブル発生素子として微細多孔質セラミックス焼結体に着目し、発生器を製作した。バブル径やバブル密度を測定し、所望のバブル条件で発生できる条件を選定した。形彫放電加工およびワイヤカット放電加工に適用した結果、放電加工に用いられる純水および放電加工油に対しても所望のウルトラファインバブルを発生できることを明らかにした。加工性能においては、形彫放電加工では電極消耗率や表面粗さの改善に効果が見られた。ワイヤカット放電加工では若干ではあるが改善効果があることが分かった。 効果発現機構を解明するため、ウルトラファインバブルによる加工液の物性変化に着目した。ウルトラファインバブルを発生させた加工液は粘性係数が減少することが分かり、ウルトラファインバブルの発生状況を粘性の変化と関連付けて評価することができる指針を得た。最終年度にはウルトラファインバブルによる冷却特性に着目し、ウルトラファインバブルが含有された液体は熱伝達性が良く、発生熱を効果的に吸熱することが分かった。放電加工時には加工液の粘性が減少したことが、放電時の気化爆発によって電極と工作物との極間に生成する気泡の挙動に影響を及ぼし、アークの飛びや放電屑の排出性が向上し放電状態を安定にさせていると思われる。冷却性の向上は電極の消耗に寄与していると推察した。
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