研究課題/領域番号 |
19K04131
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
吉川 泰晴 名城大学, 理工学部, 准教授 (20550544)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 転写 / 凹凸 / 軟質工具 |
研究実績の概要 |
独自に考案した軟質材料を工具とした金属への凹凸転写技術について,摩擦条件の転写への影響を調査した.実験では鏡面仕上げした粉末ハイス鋼(HAP72)の平行平板金型間に,パターンが形成された軟質工具を設置してアムスラー型万能試験機により加圧成形した.軟質工具の基材にはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した.金属試験片は厚さ1 mmのA1050-O材とA1050-H24材,SUS316Lとし,切削により直径12~36 mmの円板状に仕上げたものを使用した.試験片が粉末ハイス金型と接触する転写裏面には,粘度の異なるパラフィン系鉱物油3種,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを導入し,潤滑条件の影響を調べた.金型表面粗さを変化させた場合についても検討した.また,材料流動の転写への影響を調べるために,コンテナ内での圧縮試験を実施し,被加工材の塑性変形がほとんど発生しない状況での転写実験を行った. 実験の結果,潤滑油およびPTFEを使用した場合,無潤滑よりも小さな平均圧力で均一に凹凸を転写できることを確認した.また,直径/板厚(D/t)が大きくなるほど転写精度に対する摩擦の影響が大きくなり,低摩擦となる潤滑条件の方が転写精度が高くなった.しかしながら,過剰に圧縮すると材料が外周部へ大きく流動し,転写精度が悪化することが明らかになった.閉塞したコンテナ内での転写では全体的に明瞭に転写することはできず,凹凸を転写するためには被加工材の塑性流動が必要であることが明らかとなった.D/tが15のSUS316Lへの転写では潤滑剤を適用し,かつ高い圧力を加えれば全体的に凹凸の転写が確認できた.しかしながら深さの転写率が60%と低く,転写率の向上については今後の課題となることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた摩擦条件の影響および純アルミとステンレスの転写について明らかにすることができた.また,転写において被加工材の塑性流動が必要であることを実験的に明らかにすることができ,本手法の転写機構の解明に対して多くの知見を得ることができた. 以上より,おおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
本手法の転写機構の解明と転写精度および均一性をコントロールするために,被加工材と軟質工具の相対的な材料特性の違いを明らかにし,転写への影響を調査する.また,有限要素解析も活用し,凹凸部周辺の流動についても詳細に検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年7月に開催予定だった国際会議が新型コロナウイルス感染症拡大の影響で2021年7月に延期されたことにより,支出予定であった旅費および参加費の支出がなくなったため,次年度使用額が生じた.
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