研究課題/領域番号 |
19K04132
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
佐々木 実 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70282100)
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研究分担者 |
厨川 常元 東北大学, 医工学研究科, 教授 (90170092)
Nguyen HaiMinh 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), ポストドクトラル研究員 (90815862) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 三次元フォトリソグラフィ / サメ肌リブレット / 微細加工 / 金型曲面 / 垂直軸風車ブレード |
研究実績の概要 |
翼曲面に機能性微細構造を転写するため、対応する金型凹面に3次元フォトリソグラフィ加工を施した。金型材SKD11の難加工材を加工した。 翼形状は対称翼NACA0020を選んだ。形状が反転した凹面金型の材料は焼き入れ済SKD11とした。翼の上流側は、急峻に厚みが増える形状となる。曲面には工具跡が残り難く経路制御され、表面粗さは0.17-0.28μmRaであった。サメ肌リブレット微細構造は宇宙航空研究開発機構が旅客機向けに提案している形状に合わせた。実験できる流速が異なり、レイノルズ数を一定にするため、寸法を8倍大きくした。元の微細な寸法であってもパターニングは難しくない。レジスト膜を貼り付けるため、真空引きを利用して、大気圧の均一な圧力を加えた。凹面でも全方向に力が加わり、上手く貼り付いた。狙いのサメ肌リブレットには、金型に深い溝構造が必要となる。実現のために、部分窒化による硬化と、窒化されなかった部分のショットピーニングによる削り出しを行った。レジストパターンを基に、TiO2微粒子を含むペンキをパターン状にしてマスクとし、窒化した。窒化領域は硬くなるため、ショットピーニングの微粒子照射により、窒化していない領域が深く掘れた。条件出しにて、深さは約20μmに留まったが、難加工材料のSKD11に異方性の溝を形成できた。 以上のように2019年度は、垂直軸風車をゼロから設計し、その翼用金型を微細加工するに至った。金型材は実績のある硬質なものを利用した。窒化処理とショットピーニングを組み合わせた加工は、異方性プロファイルが得られる加工原理である。マスク材が窒化を止めるだけの膜質を持っていなかったことが原理であると判明しており、ハードマスクの条件は改善できる。流体抵抗低減効果を持つ、より深く急峻なサメ肌パターン溝実現への道筋を付けたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の詳細を決定していく際に、機械加工でも専用の工具が必要となる硬質なSKD11金型材料を使った実験が一通りできた。 まず、最初からSKD11にて試作をすることは挑戦的であったが、フォトリソグラフィ加工と精密機械加工の融合を目指すには必要と判断した。オークマ株式会社に研究の魅力を伝えることができ、協力が得られることとなった。微細パターンを転写する前の金型曲面は円滑である必要があるが、切削工具の跡が残り難く経路制御された。 次に、金型曲面に創る溝は深く急峻な壁をもつ必要がある。化学反応によって昇華性の化合物が得られない鋼にとっては本質的に難しい問題となる。これについては、相澤所長(表面機能デザイン研究所)の協力が得られることとなった。基材をプラズマ窒化する際に、適切な条件にすることで表面に垂直な異方性の領域を形成できること、更に細かな粒子を照射するブラスト加工を施せば、異方性エッチングが原理的に可能である。 以上の加工技術が組み合わさることは、フォトリソグラフィ加工と精密機械加工の融合を目指す本研究において相応しいことである。加工技術の将来性に賛同して頂ける形で、研究を実際的に進める上で協力者が現れたことは、当初予想していなかった成果である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、金型の僅かな異方性加工を示したに留ったが、マスク材が窒化を完全に止めるだけの膜質を持っていなかったことが原理であると、材料に浸透した窒素分布分析を行うことで判明している。ハードマスクの条件は改善できる。すなわち、レジストパターンを基に、TiO2微粒子を含むペンキをパターン状に入れ替えたが、ペンキを使わず直接酸化膜を付けることで、パターン状のハードマスクを得ることができる。このハードマスクを利用して窒化することで、流体抵抗低減効果を持つ、より深く急峻なサメ肌パターン溝実現への道筋を付けている。
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次年度使用額が生じた理由 |
以下3つの理由が重なった。 一つは、垂直軸風車をゼロから設計するのに時間がかかり、風車を回転させる際の消費電力(発電の逆で実験)を計測するパワーメータの選定(31万円を計上)が遅れたことである。これについては、今年度購入を進める。 一つは、フォトリソグラフィ加工と精密機械加工の融合を目指す本研究の趣旨に賛同して頂ける協力者が現れたために、消耗品費の消費が少なくなったことである。これについては、2019年度の結果を踏まえて、対策を加えた研究を進めるために、原材料などの費用が必要となるので、消費が進む予定である。 一つは、国内学会向けの旅費(15万円を計上)を、新型コロナ感染症拡大を防止するために3月予定の学会が開催されなかったために、使用しなかったことである。これについては、状況を見つつ使用を計画していく。
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