研究課題/領域番号 |
19K04140
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北 栄輔 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (50234224)
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研究分担者 |
玉城 龍洋 沖縄工業高等専門学校, メディア情報工学科, 教授 (60413837)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 車両隊列走行 / 合流 / 右折 / 車車間通信 / 歩行者 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
車両隊列走行とは,複数の車両が短い車間距離をおいて連なって走行する方法である.このような走行方法を取ることで交通容量を増大するとともに,高速走行時には空気抵抗を低減して燃費を改善する効果が期待できる.本研究室では,これまでに安定して隊列走行を実現する方法について研究している.そして,現在は,具体的なユースケースにおける隊列走行の実現について研究している.隊列走行が一般化した場合,隊列を構成する車両群とそうでない車両群が混在して走行する場合が多くなる.そこで,そのようなユースケースにおいて隊列を構成する車両群とその他の車両群の速度と行動を制御するモデルについて研究することを目的としている. 本年の研究成果は次のようにまとめることができる. 第1は,2つの隊列が合流する場合について検討したことである.この場合,隊列を構成する車両群では,Bluetooth通信によって車両間で速度情報を受け取り,それを用いて隊列を安定して保つように制御する.同様のユースケースについては,これまでにも行ったが,以前の研究においては,非通信車両の存在を考慮していなかった.実用化のために,非通信車両を含めた合流挙動に対応できる車両隊列走行の制御モデルについて検討した.複数のモデルを比較検討し,コンピュータシミュレーションにより,合流状況を制御できることを確認した. 第2は,隊列を構成する車両群が交差点を右折する場合について検討したことである.車両移動において一般道路における右左折は必要不可欠である.そこで,列走行車両群の交差点右折時における歩行者衝突回避のために,ポテンシャルフィールドの考え方に基づき,移動中の歩行者の通過や一時停止,進路変更に伴う衝突リスクを回避する自動運転アルゴリズムを提案し,コンピュータシミュレーションによって妥当性を確認することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
車両隊列走行とは,複数の車両が短い車間距離をおいて連なって走行する方法である.これまでに安定して隊列走行を実現する方法について研究しており,現在は,具体的なユースケースにおける隊列走行の実現について研究している.ユースケースとは異なる隊列走行同士や一般車両と隊列走行する車両群が関連する走行状態であって,本研究では次のような場合を想定している.1)隊列走行する車両軍に別の車両が加わる場合や離れる場合,2)交差点などにおいて,異なる隊列車両群が相互干渉して走行する場合,3)隊列走行する車両群に隊列走行制御を受けない別車両が混ざって走行する場合等である. 本年度は,次の2つについて検討した.第1は,2つの隊列が合流する場合において,車車間通信を用いて隊列走行する車両群と非通信車両の混在する状態存在を考慮する場合である.第2は,隊列を構成する車両群が交差点を右折する場合において,歩行者との干渉を考慮する場合である. 新型コロナウイルスの感染拡大のため,実験が行えなかったこと,予定していた学会発表が実施できなかったことなどから上記の自己評価とした.この影響は,次年度も大きくなることを危惧している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究計画は次のようにまとめることができる. 第1は異なるユースケースとして,隊列走行する車両群に,隊列走行制御されない一般車両が混ざる場合において,車両の速度と行動の制御モデルを改良するとともに,LEGOマインドストームEV3で作成したロボット車両を用いた実験を実施し,コンピュータシミュレーションの結果と実験結果を比較することである.これにより,追伸の影響やセンサーの影響を含めた実験を行うことができる. 第2は,隊列走行する車両群と歩行者が混在する交通状況について制御モデルを改良することである.歩行者は車両に比べて速度が小さく,行動の自由度が高いことが特徴である.前年度のモデルでは,歩行者の行動が比較的単純であったので,それを改良し,人数を増やすことを考える.つづいて,LEGOマインドストームEV3を用いた実験を行いたいと考えている. 最後に,これらの成果について,国内講演会や国際会議で発表を行うことを予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は,次のような研究計画を予定していた.第1は異なるユースケースとして,隊列走行する車両群に,隊列走行制御されない一般車両が混ざる場合において,車両の速度と行動の制御モデルを設計することである.その結果を基に,LEGOマインドストームで作成したロボット車両の速度と行動の制御モデルを定義する.LEGOマインドストームによる実験結果をコンピュータシミュレーションと比較し,結果の妥当性を検討する.そして,これらの成果を国際会議に参加する予定であった. しかし,新型コロナウイルスの蔓延に伴って,実験を実施できなくなった.これは,コロナ禍によってキャンパスが閉鎖され,入構が制限されるとともに,実験において設備を共有することによって人から人への感染が心配されたからである.さらに,共同作業をする学生が投稿困難となったことも大きかった.さらに,国際会議や国内講演会の多くが中止・延期となり,実施される場合もオンラインとなった. 以上のことから,設備購入費,旅費,国際会議参加費などが少なくなってしまったことが,次年度使用額が生じた大きな理由である.
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