研究課題/領域番号 |
19K04141
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
妻屋 彰 岡山県立大学, 情報工学部, 教授 (10324815)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シーン記述方法 / 共創設計支援 / 文脈価値 / データマイニング / 設計実験 / as-isとto-beモデル |
研究実績の概要 |
(1)Web情報を活用した課題となる生活シーン抽出方法の構築 Web情報を用いた生活シーンの構成要素抽出方法に関しては,製品の使われ方とそれに対するユーザの評価をセットで抽出する方法として,2020年度までに検討した共起ネットワークを用いた共起語句群の抽出と極性辞書の作成・活用により語句群のネガティブ・ポジティブ判定を組合せることにより実現することを考案した.ユーザレビューを対象にケーススタディを行った結果,同様な評価値が付与されているレビュー群の文章を精査したところ,含まれている一文一文の内容と共起ネットワークで抽出された共起語句群がよく一致していること,各文を構成している共起語句群一つ一つのネガ・ポジ判定の数値は様々であるが,それらの平均値と個々のレビューに付与されている評価とがおおよそ対応していることを確認できた.このことから,共起ネットワークと極性辞書を用いた提案方法によって製品の使われ方とそれに対する評価に関してより詳細なレベルで抽出できるとの結論を得た. (2)共創による文脈価値を検討可能なシーン記述モデルの提案 2021年度も2020年度に引き続き,新型コロナウイルス感染症の影響により,当初予定していた被験者を用いた共創の設計実験を行うことができなかったため,2019年度末に実施した予備実験,第1回の実験の記録データを用いた,シーンの記述(形式化)および記述されたシーンから共創によってアイデアを生成するプロセスに関する分析を継続して行った.また,シーンの構成要素と要素間の関係を時系列で表したシーン記述に関しては,公益社団法人発明協会が選出しているイノベーション100選を対象にイノベーション前・イノベーション後のシーンを記述し,比較することによってイノベーションの類型化を試みた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
検討課題(1)については,検討しているシーンの特徴語抽出方法に関しては,概ね想定していた成果を挙げている.一方,特徴語句からシーンを再構成するフェーズに関しては自動生成は断念し,代替方法としてシーンの再構成はせず,得られた特徴語句から直接対象シーンで用いられている製品・サービスの特徴や魅力点,課題点など,新しい製品・サービスコンセプトの材料となる情報を取り出すことに切り替え,概ね良好な成果を出している. 一方,検討課題(2)については,当初計画では2020年度以降に行う予定であった設計実験による分析や検証に関して,新型コロナウイルス感染症の影響で2020年度以降実施することができない状況が続いている.このため,2019年度に前倒しで予備的に行った設計実験の分析しかできない状態であり,予定していた分析結果を反映した方法による再実験,詳細な共創設計プロセスの分析,他の方法との比較などができない状況となっている. このようなこともあり,成果をまとめる部分も中途半端でままならず,成果の公表も遅れている. 以上を総合すると検討課題(1)に関しては概ね順調に進展しているが,検討課題(2)に関しては遅れているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の影響で研究の中核部分の一つにあたる設計実験を行うことができない状況が続いたため,補助事業期間延長を行った.現状,新型コロナウイルス感染症終息の見通しは立っていないが,設計実験等を行うという観点では状況が改善されてきたため,研究計画を修正し,設計実験も実施できる準備をしつつ研究を進めていく.修正点は以下のとおりである. (1)Web情報を活用した課題となる生活シーン抽出方法の構築に関しては,2021年度に修正した計画で概ね順調に成果を挙げている.一年延長を受けて,2021年度の成果を深化させること,およびユーザによる使われ方とその評価の違いに注目し,その違いがどこから現れるのかに関して検討を行う. (2)2022年度も新型コロナウイルス感染症終息の見通しが立っていないが,被験者を限定・少数にし,実験時間を配慮するなどの対策を取り設計実験を実施できるようにする.また,当初予定では,最終的な実験検証として共創による設計から三次元造形装置を用いた製作まで実施することを計画していたが,時間的に困難であることから,設計実験による他の共創設計支援方法・ツールとの比較を行うこととする.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響で,研究打合せ,学会の講演会・会議等はすべてオンラインとなったため,2021年度は旅費の支出が発生しなかった.また,2021年度に予定していた被験者を用いた設計実験も実施することができず,それに伴って実験データの整理等の作業量が大幅に減ったことなどで2021年度人件費・謝金が発生しなかった.さらに,当初2020年度に購入予定であった三次元造形装置に関しても,実験が実施できる状況にないことから2021年度も購入を保留した.以上の理由により次年度使用額が生じている. 2022年度は補助事業期間延長により追加された一年であり,交付決定額は全て受領しているため,2021年度末に生じている次年度使用額で研究を進めることになる. 2022年度も引き続き新型コロナウイルス感染症の影響は続くものと考えられるが,状況は改善されており,学会参加や研究打合せのための旅費が発生することが見込まれる.同様に2年間実施できなかった設計実験を実施することを計画しており,被験者謝金やデータ整理のための人件費が発生する.また,研究計画の修正に伴い,三次元造形装置の購入は不要となったが,共創設計支援方法の比較検討のためレゴシリアスプレイのファシリテータが必要となることから,その養成トレーニング受講費として,三次元造形装置購入として計上していた費用の一部を充てる.
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