本研究はタブレット操作時での指のすべり動作における触感の再現化について,触感をもたらす視覚的刺激と触感に対する力学的応答の両面から触感を定量的に表現する指標を確立することを目的とする. 2021年度は,全体の総括として,平板型摩擦測定装置にタブレット端末を設置して画像の応答遅れによる触感試験と摩擦測定を同期させて行い,視覚的刺激に対する触感の変化を定量的に表現する指標を提案することを目的とした.まず,2020年度に引き続き,摩擦における指の接触面観察のための画像取得を試みたが,摩擦測定と同期させる方法について再検討が必要であり,従来のインクスタンピング法により接触面観察を実施することにした.次に,Windowsを搭載したタブレットを使用して画像の応答遅れを生じさせるプログラムを作成した.画面に表示された●を指で動かす際に応答遅れが生じるという基本設定において,プロトタイプでは遅れの間隔を距離や時間,動的変化や一定の間隔にするなど各パラメータの効果を予備試験において調査し,遅れの間隔の与え方により指にかかる垂直荷重に差異が現れ,遅れに対する正答率も変化することがわかった.このプロトタイプの結果を踏まえて,プログラムを改良し複数の研究対象者に対して本格的にデータ収集を進めていく.さらに,既存の摩擦測定装置により,種々のテクスチャを施したガラス表面上で指の摩擦測定と触感試験を実施し,摩擦による触感の表現指標の確立を試みた.指先皮膚の水和状態を変化させて硬さや水分量の異なる種々の指により摩擦と触感の関連性を調査した結果,すべり感覚は皮膚の水和状態に依存し摩擦とも相関性がある一方,さわり心地は材料表面の物性と相関があり指の水和状態との依存性は見られなかった.得られた結果より,すべり感覚は摩擦による定量的表現の可能性を見出し,相関性の低い触感は定量的表現が困難であることがわかった.
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