研究課題/領域番号 |
19K04149
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田中 隆太郎 広島大学, 工学研究科, 准教授 (60361979)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 切削油剤 / 転写精度 / 刃先丸み / 工具摩耗 / 仕上げ面粗さ |
研究実績の概要 |
切削油剤が作用する部位の摩擦環境を実現する手法として,弾性上滑り現象が生じるアップカットのエンドミル加工における切削抵抗に着目し,この値を用いて,切削油剤の潤滑性の指標となる特性値μ-MFMを算出した.切削油剤の摩擦係数の温度依存性も確認できた.ここで得られた特性値を用いて刃先転写性への影響について検討を行った.切削油剤の影響により仕上げ面における切れ刃輪郭の転写(送りマーク)形状が崩れる事象について検討した.切れ刃輪郭の転写誤差が大きくなる切削条件では,仕上げ面生成域の最大切取厚さが刃先丸み半径以下となっていた.このような微小切削領域を含む切取り厚さに応じた工具の食付き性を評価するため,マイクロフィードエンドミル加工の切削抵抗の不安定性に着目し検討を行った.1回のアップカット中の切取厚さは一定ではないので1回の切削の終了時の値をそれぞれの切り取り厚さの代表値とした.ここでは半径方向切込みと工具半径が同じなので,送りfmm/revがtとなる.なお,評価値は任意の時間における累積最大値と接線力Fcで囲まれた部分の面積を1回の切削時間で除したものを不安定性の定量値CFIRと定義した.これをtを変化させて繰り返した.切取り厚さが薄く,潤滑性の高い切削油剤ほどCFIRが増加し,旋削加工の仕上げ面の転写誤差は高くなる傾向を示した.この事から,工具食付き性が転写誤差へ影響することやCFIRが工具の食付き性の指標となることが示唆された. 刃先丸みに対する仕上げ面生成領域における最大切取厚さの比が同じとなるような条件で旋削とエンドミル加工を行い,刃先丸みの数倍程度の切込みで摩耗が進行しやすいことが分かった. 旋削加工において,未使用の工具では潤滑形態による転写誤差の違いは小さいが,潤滑性が高い油剤のときに転写誤差がやや小さい. しかし,工具が摩耗すると潤滑性が高い油剤で転写誤差が増加した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
切削中の温度測定に関して検出素子のトラブルにより実施できなかったが,その他については計画通りに実施ができた.また,切削工具は刃先丸みが1水準のみであったので,異なる刃先丸みを持つ工具についても実験を行いたい.また,送りマークが不明瞭な場合でも粗さ曲線から転写誤差の算出ができるプログラムを作成した.
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今後の研究の推進方策 |
マイクロフィードミリングにおいてアップカットの切削開始直後の切削挙動に着目した機上評価方法の実施条件最適化について,特に切削油剤の潤滑性評価のための切削開始直後の切削抵抗を用いた摩擦特性値の算出において ①剛性に影響する工具直径,②弾性接触長さに影響する切れ刃丸み,③直線切れ刃のみを用いノーズ部を使用しない切削形態の検討を行う. 提案している方法を用いれば切削速度と同じ摩擦速度で摩擦試験が可能であるが,その時の温度を明らかとしていないので,光ファイバ型2色温度計を用いて摩擦/切削温度の測定を行う予定である.申請者はこの温度計を用いた多くの切削温度測定の実績がある.なお,切削油剤は100ml/h程度のミスト供給で行う.最適化は以下に示す3項目である.なお,切削速度は60~240m/mn(1~4m/s)の予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
1-3月期に国内学会等での情報収集を予定していたが,出張を控えなければならない情勢のため中止したため.次年度の旅費として使用する予定である.
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