油圧システムで発生する圧力脈動を抑制するために、アキュムレータが通常用いられる。しかしながら、アキュムレータは、定期的な保守点検が必要であり、取り付けスペース確保に問題がある。油圧システムのブレークスルーを補機の立場から実現するために、本研究室で提案・開発を行っている油圧システム用圧力脈動抑制素子の研究開発が必要である。 申請者らが提案・開発している圧力脈動抑制素子は、配管にインラインで取り付け可能で配管上部に取り付けスペースを必要としない単純な構造を有する。試作した素子を用いた実験から、その素子は良好な性能を有することが実験的に明らかにされている。しかしながら、その理論的な理由付けが明らかにされていないのが現状である。 そこで、本研究では、実験と2020年度の研究で提案した1D数学モデルを用いたコンピュータシミュレーションにより、この素子の系統的な設計手法確立の契機を得ることを試みる。 2021年度は、①圧力脈動を抑制しているウレタンゴムチューブの変位計測による提案した圧力脈動抑制素子の原理の検証、②提案した圧力脈動抑制素子のパラメータの最適値の存在の実験による検証、③1D数学モデルの適用範囲の明確化を目標に研究を遂行した。その結果、提案した圧力脈動抑制素子の原理が正しいこと、および、圧力脈動抑制素子のパラメータには最適値が存在し性能に大きく影響を及ぼすパラメータはウレタンゴムの硬度であることが明らかとなった。また、1D数学モデルで設計パラメータを変更したシミュレーション結果より算出した圧力脈動抑制素子の性能については、その傾向は実験結果と良好に一致していることが明らかとなった。よって、この数学モデルを用いれば、提案した圧力脈動抑制素子の設計パラメータの選択する方向の予測が設計段階で可能となった。
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