研究課題/領域番号 |
19K04155
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
山本 建 東海大学, 工学部, 准教授 (20780323)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スクイズ / 摩擦係数 / 摩擦伝達 / 真実接触面積 |
研究実績の概要 |
本研究は,スクイズ運動を伴うすべり接触面において,摩擦係数と電気抵抗を同時に測定し,摩擦係数と接触面積の関係を把握することで,高摩擦係数と耐損傷を両立する粗さ形状を見出すことを目的とする.初年度の実績を以下に示す. (1)電気抵抗測定装置の製作と動作確認:スリップリングと抵抗測定器を用いて,往復動ピンと回転ローラ間の電気抵抗を測定するシステムを製作した.ローラが静止した状態でピンを極低速で押圧し,荷重に応じて電気抵抗が有意に変化し,接触面積の増減が測定可能であることを確認した. (2)摩擦係数と電気抵抗の測定:ピン接近時は,荷重が増加し摩擦係数が0.02程度に達した時に絶縁から突如として350mΩ程度の電気抵抗を計測し,その後,漸減する.これは,(1)の静負荷では接触楕円中央から徐々に接触面積が拡大するのに対し,動負荷ではスクイズ作用によって接触楕円中心部が変形し,周辺部が同時に接触するため大きな面積で接触し始めたと推定している.0.02は油のトラクション係数と考える.一方,離脱時は摩擦係数がほぼ一定であり,電気抵抗は一定値を保ち,完全除荷時に摩擦抵抗は0に急減し,電気抵抗は絶縁となる.これは,離脱時はスクイズ項の符号が反転し,油膜形成を妨げるため接触面積が維持され,直接接触率と接触部の摩擦係数の積が全体の摩擦係数であるとすれば,電気抵抗すなわち接触面積と摩擦係数が一定であることの説明がつく. (3)テクスチャの影響: すべり摩擦に対して摩擦向上の効果を確認したテクスチャをローラに施し測定を行ったが,本研究で注目する摩擦係数の立ち上がりに対しては全く効果がなかった.電気抵抗はテクスチャなしよりも大きく,接触面積は小さくなっているが,これはテクスチャ溝によりマクロな面積が小さくなったためと推定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
装置の設計,製作は予定通り行うことができた.荷重や摩擦力に対し,測定した電気抵抗は有意に変化しており,この方法で接触面積の変化を測定できることが分かった.電気抵抗で摩擦係数と接触面積にある程度の説明を与えることができたと考えている.しかしながら測定法の検証に時間をとられ,計画していた粗さ違いでの測定を行えていない.
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今後の研究の推進方策 |
予定通りに進めるが,(1)ヘルツ接触面積の変化やテクスチャ溝などマクロの接触面積変化と,粗さ先端のミクロの接触面積変化の区別がつかない,(2)反応膜が摩擦係数と電気抵抗に影響を含んでいる,という問題を生じている.これに対し,(1)マクロ接触面積を計算し,接触面積の検討に付加する,(2)添加剤を含まない油で実験を行い,差異を確認することを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
計測方法を構築に時間をとられて進捗が遅れており,予定していた仕様違いテストピースの発注が次年度にずれ込んだため.
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