研究課題/領域番号 |
19K04157
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
野口 昭治 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 教授 (80349836)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ボールねじ / 非対称溝形状 / アキシアル剛性 / 基本動定格荷重 / 圧痕 / 塑性変形 |
研究実績の概要 |
今年度の研究としては、2019年度に市販のボールねじと同じ加工精度で試作した非対称ねじ溝ボールねじのアキシアル方向負荷容量の確認試験を行った。ボールねじにおいては、ねじ溝とボールの接触角が大きくなるほど基本静定格荷重が大ききなることがISOの計算式で示されている。そこで、試作した非対称ねじ溝ボールねじと対象ねじ溝の標準ボールねじを用いて、大きなアキシアル荷重を軸方向に負荷した際にねじ溝に形成される圧痕形成状況を実験により確認した。負荷容量を向上さる際に用いるパラメータとして、長寿命の観点から基本動定格荷重を向上させるという考え方もあるが、基本動定格荷重は繰り返し応力が作用した際の金属疲労寿命(はく離が起こるまでの時間や総回転数、総走行距離)を計算するために用いられるパラメータである。負荷容量としては、軌道面やねじ面に音・振動に影響を与える大きさ(深さ)の圧痕(塑性変形)が形成されるまでの荷重とした方が妥当性が高いと判断して、本研究では圧痕形成状況を調査することにした。 試作した非対称ねじ溝ボールねじの接触角は、負荷側が60°、反対側が30°である。標準ボールねじは41°であり、接触角を3種類で実験を行った。本来であれば、圧痕が形成されるまでのアキシアル荷重を測定できることが好ましいが、接触部を直接観察することができないので、計算によって接触面圧を求め、所定の接触面圧になる荷重を負荷した際に形成される圧痕の大きさを測定し、横軸アキシアル荷重、縦軸圧痕の大きさの関係をグラフ化することで、耐圧痕形成能力を評価した。接触圧力が大きくなるほど圧痕は形成されにくくなっており、標準ボールねじと比較して、同じ大きさの圧痕が形成されるアキシアル荷重は約1.3倍となっていた。今年度の研究により、開発した非対称ねじ溝ボールねじのアキシアル荷重負荷能力が向上していることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度に非対称ねじ溝の試作とアキシアル剛性向上まで進んだので、2020年度にアキシアル荷重の負荷能力の向上を実験を行うことができた。科研費申請書に記述した計画では、アキシアル荷重の負荷能力向上を検証する実験は、2021年度に行うことになっていたので、申請時の計画よりは進んでいる。試作していただいた企業の協力もあって、計画よりも研究は進展していると判断する。 ただし、新型コロナ(COVID-19)の影響があり、学会発表予定の大会が延期になるなどしたため、結果の発表は2021年度となる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究課題は、走行耐久試験である。試作していただいた企業の協力を得て、計算寿命までの連続走行試験行うことになっているが、新型コロナ(COVID-19)の感染状況によっては、企業の操業形態が大きく変わってしまうことが懸念される。企業の操業状態が通常と同じであれば問題はないが、操業短縮などの状況になると研究遂行が厳しくなることが予想される。
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