ボールねじは転がりを利用した機械要素であるが、すべりねじに対して仕事効率が高く、精密な送りや位置決めができるので、工作機械の送りねじとして使用されている。また、近年、射出成形機の電動化にともない、ボールねじが動力伝達のために使用されるようになってきた。しかし、ボールねじは、ねじ溝面とボールが接触する際、接触面圧が高くなるので力の伝達には不向きとされてきた。射出成型機では応答性の良さからすべりねじではなく、ボールねじを用いる必要があり、アキシアル負荷容量、剛性向上が課題となっている。そこで本研究では、ボールねじの溝形状をアンギュラ玉軸受のように非対称(一方向の接触角を大きくする)にすることで一方向からの大きなアキシアル荷重を負荷できると考え、試作を行い、性能を確認した。 第一次試作では、金属三次元プリンタを用いた非対称ねじ溝形状の雄ねじとナットの試作を行い、回転が機構的に可能であるか、接触角を大きくすればアキシアル剛性が向上するかの確認を行った。第二次試作ではボールねじ製造メーカーに依頼して、市販されているボールねじと同じレベルの加工精度で試作を行い、基準とした対称ねじ溝ボールねじと比較して約1.6倍のアキシアル方向剛性となることを実験的に確認した。さらに、数値解析上では、基本動定格荷重が1.15倍,基本静定格荷重が1.25倍に向上する結果も得られていたが、ナットにアキシアル荷重を負荷してねじ面に形成される圧痕を観察したところ、接触角が大きいほどねじ面に形成される圧痕は小さい結果となり、基本性定格荷重が向上していることも検証できた。 ボールねじの耐久試験に関しても、ボールねじ製造メーカーにて試験を継続中である。5本試験を行っているが、報告書作成時点では定格寿命(528時間)の3倍以上の耐久性があることを確認しており、非対称ねじ溝ボールねじの実用性も検証できたと考えている
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