本研究開発の目的は,差動滑りのような微小すべりが内在する転がり接触部で構成されている超大偏心量許容形等速軸継手(以下軸継手)の寿命を,転がり疲労の観点から定量的に明確にすることにより,実用化適用範囲の拡大を図ることである.更に,軸継手の摩擦特性を,表面粗さを考慮したGREENWOOD-WILLIAMSONモデルで代表されるような,ストライベック曲線で現れる混合潤滑領域での潤滑理論(混合潤滑理論)により明確にし,機構安定性や寿命向上を図ることである. 本年度(令和3年度)の研究実績としては,以下の通り着手し遂行した. ①軸継手寿命試験機の設計製作と寿命試験の実施:寿命試験機として,新たな動力吸収形試験機の設計製作を完了した.当初の寿命試験機の構想は,現在所有する特性試験機を改造して実施する予定であったが,特性試験機にて計測中のピエゾ圧電素子を埋め込んだ力測定専用の軸継手の脱着に時間を要することから,新たに寿命試験専用の試験機を設計製作した.さらに,寿命試験専用軸継手(寿命試験用テストピース)の製作も完了し,寿命試験を実施した.現在,寿命試験結果のデータ点数を増やすため,継続して寿命試験を実施中である. ②軸継手の寿命理論:軸継手の疲労限を表現するためには統計的な扱いが必要なため,寿命分布にワイブル分布を適用する.まず,1個のボールとボールが転動するプレートの案内溝との接触部の転動疲労寿命をLundberg-Palmgren理論によって誘導し,次に,6個の案内溝の疲労寿命を求めた後,一対の軸継手プレートの総合疲労寿命を算出する手法にて,軸継手の寿命計算式を考案し導出した.すなわち,入力側プレートと出力側プレートとの総合寿命を考慮し算出することで,軸継手の疲労寿命基本式を確立した. これらの研究実績の一部は,日本機械学会東海支部TEC22(2022/3東海学生会オンライン)にて発表した.
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