研究課題/領域番号 |
19K04162
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
村上 敬 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (40344098)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トライボロジー / ホウ化物 / 高温 / 放電プラズマ焼結 / 窒化ホウ素 |
研究実績の概要 |
2019年度は、まず室温~1000℃で低摩擦を示す摺動材料を明らかにすべく、高温でh-BN被膜を形成する一方で、室温近辺で低摩擦のReO3被膜を形成すると予想されるReB2基焼結体を放電プラズマ焼結により作製し、相手材Si3N4ボール、大気中室温~1000℃で摩擦・摩耗特性の評価を行ってみた。X線回折及びSEM-EDS分析の結果、得られた焼結体は状態図から予想される通り緻密なReB2単相から構成されていた。また高温摩擦試験の結果、室温で約0.3、800℃、1000℃で0.1程度の低摩擦係数の得られることがわかり、またReB2基焼結体上に形成された摩耗痕のXPS分析の結果、高温域では予定通りh-BNの含まれる被膜が形成されていることが分かった。さらにReB2基焼結体のArガス中におけるビッカース硬さは室温~800℃で約2500~3000、1000℃でも2000以上で、良好な耐摩耗性も期待できると考えている。 さらにReB2基焼結体とは別にN2ガス中でh-BN被膜を形成すると予想されるSiB6、SiBn、B6Oの緻密かつ硬質な焼結体を放電プラズマ焼結により作製した。このうちB6Oについては、焼結中Ta薄膜でB6O粉末とグラファイト型を分け、両者間の反応を防ぐ必要のあることがわかったが、このB6O焼結体は水中でも0.1程度の低摩擦係数かつ低摩耗であることが分かった。さらにSiB6焼結体については、大気中室温~1000℃において、連続して0.1~0.4以下の安定した低摩擦係数を示し、かつ大気中800℃にてh-BNを含む被膜を形成することがわかった。上記ホウ化物のN2ガス中における高温摩擦試験は近日中に実施予定であるが、ReB2、SiB6焼結体共に酸化の起きやすい大気中で既にh-BNが形成されていることから、N2ガス中では、高純度のh-BN被膜が容易に形成されると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ReB2基セラミックス、SiB6焼結体は大気中でも広い温度範囲で低い摩擦係数を示すこと、高温域ではh-BNを含む被膜を形成することがわかり、N2ガス中で高濃度のh-BN被膜の形成される可能性の高いことが分かったため、研究はおおむね順調に進展していると考えている。さらに高温摩擦特性の評価を近日中に実施予定で期待であるSiBn、B6O焼結体も上記化合物同様、良好な摩擦・摩耗特性が期待できると考えており、この点でも研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度作製したReB2基セラミックス、SiB6、SiBn、B6O焼結体について、相手材をいろいろ変えながら、大気中、N2、Arガス中での摩擦試験を行い、室温~1000℃でより低摩擦・低摩耗を示す条件を明らかにする。また高濃度のh-BN被膜の得られる条件の絞り込みを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
評価するホウ化物の作製、及び構成相の同定や緻密性の評価に時間がかかり、N2、Arガスを使用する摩擦試験の実施が2020年度初めにずれ込み、装置配管、ジグ等の設置・作製費用を2020年度に支出する予定になったこと、さらに2020年5月末にオーストリアで実施され、招待講演を行うことになっていた国際会議THERMEC2020の参加費、旅費を2020年度に支出することに予定変更したため、次年度使用額が生じた。なお装置配管、ジグ等の設置・作製費用は2020年度中に支出予定であるが、THERMEC2020については、その後コロナウイルスの影響で2021年春に延期になっており、最終的にどうするかは会議直前の今年度末頃の状況を見て改めて検討する見込みである。
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