2021年度は、現在管理している高温摩擦試験機では実現しにくい温度域の環境を超高温真空炉を用いて得ることにより、立方晶窒化ホウ素(h-BN)被膜の形成挙動を調べることにした。 まず昨年度までの結果から、窒化珪素-炭化ホウ素(B4C)、窒化珪素-六ホウ化シリコン(SiB6)の組み合わせを用いるとh-BN被膜が形成されやすいと予測されたため、今年度は(1)アルミナるつぼ中に入れたB4C粉末を詰め、その中に窒化珪素試験片を埋め込んだもの、(2)アルミナるつぼ中に窒化珪素粉末を詰め、SiB6試験片を埋め込んだもの、両方について、真空中1500℃で2時間熱処理を行い、熱処理後、(1)の窒化珪素試験片、(2)のSiB6試験片表面に形成された反応物をXPS、SEMにより分析してみた。 その結果、XPS分析では(1)の窒化珪素試験片、(2)のSiB6試験片共に表面上に強いh-BNのピークを検出することができた。しかしミクロンオーダーの検出向きのSEMによる(1)の窒化珪素試験片、(2)のSiB6試験片の断面観察では、ミクロン単位のh-BN被膜の形成を確認できなかった。このため、今回の実験では、(1)の窒化珪素試験片、(2)のSiB6試験片共にXPSで検出可能で、SEMでは検出しにくい、10~100nm程度のh-BN被膜が形成されていると考えている。 このことから、1500℃でB4Cと窒化珪素の組み合わせ、あるいは窒化珪素とSiB6の組み合わせで摩擦試験を行った場合、膜厚10~100nmレベルでかつ高濃度の六方晶窒化ホウ素被膜が形成されると考えている。一方発光材料の分析に用いるフォトルミネッセンス分析を行うには、ミクロンオーダーの膜厚が必要されていることから、測定可能な被膜を形成させるには摩擦時間か摩擦温度を若干増やす必要があると考えている。
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