研究課題/領域番号 |
19K04164
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
三神 史彦 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40272348)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 流体力学 / 粘弾性流体 / 型変化 / PIV計測 / 複屈折 / Green関数 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
粘弾性流体中では横波のせん断波が伝播し,また定常流れでは支配方程式の型変化が起こる.本研究は,粘弾性流体の流れを支配する偏微分方程式の型変化が物体まわりの粘弾性流体の流れに与える影響を明らかにすることを目的としている.令和元年度は,せん断波の伝播速度とゼロせん断粘度の情報に基づいて弾性数の値を算出するために,コーンプレート型粘度計を導入した.また,鋭敏色板を用いたクロスニコルによる複屈折分布の可視化システムの整備を行なった.いくつかの興味ある問題について,以下の研究を行なった. (1)粘弾性流体中を落下する2球の相互作用について,基礎的な実験データを取得した.(2)円柱および円柱群のまわりの流れについて,複屈折分布の測定とPIVによる速度場の計測を行ない,データを蓄積した.この実験データは,数値計算との比較にも役立てた.(3)細管へ流入する粘弾性流体の流れについてPIV計測を行い,粘弾性マッハ数が与える影響の大きさが流体の種類によって異なることがわかった.(4)同心二重円筒内で凹凸を有する内円筒を回転させたときの流れをPIV計測によって調べ,得られた渦度分布のパターンと支配方程式の特性曲線との対応を調べた.(5)支配方程式を線形化して得られる渦度に関する波動型方程式のGreen関数に基づいたモデルを提案した.このモデルによって,球や円柱まわりの支配方程式の型変化を伴う粘弾性流体の流れの問題について,見通しをもって分析することや解釈することが可能になった.(6)流れ関数と渦度による形の運動量保存則と,UCMモデルおよびOldroyd-Bモデルの構成方程式を用いた差分法による数値シミュレーションプログラムを作成し,円柱をよぎる粘弾性流体の流れの数値計算を行なった.この結果,2つある支配パラメータによって流れ場が受ける影響を把握することが可能になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
導入したコーンプレート型粘度計は海外メーカーの製品であるが,予定通り納品され,直ちに測定にとりかかることができた.可視化した複屈折分布を撮影するためのカメラは,予定よりもリリース時期が遅れることが判明したが,同じ撮像素子とインターフェイスを持つ他社製品に切り替えたことにより,研究計画への影響はなかった. 線形化した支配方程式のGreen関数に基づいて提案した渦のモデルは,実験結果を分析・解釈するときの有用な視点となっているほか,二次元流れについては数値シミュレーションのプログラムが完成している.実験(PIV計測および複屈折分布計測),理論,数値シミュレーションによって総合的に研究を行う基盤が整い,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大により,実験の実施にも大きな制約を受けていることから,数値シミュレーションによる研究を実験に先行して行うこととし,可能になり次第,実験を再開させる.令和2年度は,完成させた二次元流れについての数値シミュレーションプログラムを用いて,以下の研究を行う. (1)並列配置,直列配置,食い違い配置された円柱をよぎる粘弾性流体の流れの解析を行い,粘弾性マッハ数の影響や,せん断波マッハコーンの干渉について調べる. (2)平行平板間におかれた円柱まわりの粘弾性流体の流れの渦度分布を調べ,粘弾性マッハ数と弾性数から決まる特性曲線との関係を調べる. (3)回転円柱まわりの粘弾性流体の流れの解析を行い,粘弾性マッハ数の影響について調べる. (4)回転二重円筒内の粘弾性流体の流れを調べ,粘弾性マッハ数と弾性数から決まる特性曲線との関係を調べる.
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