静止液体中における先端を封じた細孔からの完全な気体の排出を目的として、音波照射実験を行った。今年度は、昨年度までに明らかにした気体排出を促進する二つの音波の周波数に着目して、それぞれの周波数の音波照射した際に発生する現象を高速度撮影を用いて観察した。さらに、これまで明らかにした現象に対して、使用する液体や固体の種類の影響、特に表面濡れ性の影響について調査した。 まず、昨年度明らかとなった2段階の周波数を照射する際の現象について述べる。まず低周波な音波によって細孔内の気柱そのものが大きく振動した。その振動は孔出口付近の気液界面を大きく振動させ、液体中では気泡となって排出され、逆に気体中では液滴となって孔の底部へと飛散した。この飛散が繰り返されることで一つの気柱は複数の気柱へと分離することが示された。次に、比較的高周波な音波の照射によって分裂した気柱が振動し接近した。接近気柱はその後合体し、振動に伴って排出された。気泡振動によって一旦孔を出た気泡は、その形状から小さな孔へと戻ることができず、気柱は孔外へと排出された。このとき細孔長を越えるような波長の音波を照射しているが、それぞれの気柱界面は同期して振動しておらず、孔入口付近の気泡振動が孔底部の気泡振動を誘起していることが示された。そのため分裂した気泡が遠すぎる場合には、気柱接近が発生しなかった。 次に、使用材料や液体について述べる。粘性や表面張力係数の異なる液体や、濡れ性の異なる材料についても実験を行った。その結果、表面張力係数の小さなアルコールにて若干の排出率向上が見られたが、本質的には大差がない結果となった。
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