研究課題/領域番号 |
19K04169
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
辻本 公一 三重大学, 工学研究科, 教授 (10243180)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Multiple jet / Active control / Heat transfer / Mixing / DNS / Impinging jet / Free jet / DRL |
研究実績の概要 |
噴流の多数化によって生じる、単独噴流どうしの干渉による性能低下を回避・改善し、分布特性を一様化する能動制御手法を開発する。そのため単独噴流の混合制御で見出した噴流の動的制御に加え、新たな能動制御にも取り組み、個々の噴流の効果的な制御手法を開発する。本年度では、開花噴流を実現するのに螺旋と脈動励起を与える従来の方法に対し、実際の機器において応用する観点から、噴出孔を傾斜させ軸周りに回転させる傾斜回転制御と脈動励起を組み合わせる新たな制御方法を考案し、従来の方法と同様、回転周期と脈動励起の周波数比をパラメータとして拡散状態が制御できること、ならびに従来の方法よりも拡散性能が向上することを見出した。前年度において開花噴流を壁面に衝突させると伝熱特性が均一になることを見出していたが、その要因を明らかにするため、衝突壁近傍を調査し、均一性に寄与する熱流動特性を明らかにした。多数の衝突噴流の場合、伝熱特性を均一化するため噴流を振動させる方法を提案、伝熱特性の均一化が図られることを明らかにしていたが、さらに噴流と壁との衝突距離を変え、それが伝熱特性に与える影響を評価した。混相噴流の制御については開発した時間発展型の液体噴流のコードを用いて、噴流の厚さ方向あるいはスパン方向に速度差を制御することで液体噴流の分散、拡散性能が向上することを明らかにしていたが、それを簡便な方法で実現できる手段としてスパン方向にスリット状の仕切りを設けることによるせん断層制御を考案し、その方法で同様の微粒化特性の向上が図られることを明らかにした。さらに噴流の伝熱特性の改善に関し、機械学習による伝熱制御の可能性を探るため、深層強化学習による2次元衝突噴流の伝熱制御を行い、古典的な開ループ制御の結果と比較、機械学習により伝熱状態を改善する有用な解が得られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度において検討した今後の研究推進の方策を整理した結果、(i)単独の自由噴流の場合、開花噴流の空間分布の非一様性に関する回転周期や脈動周期などの制御パラメータが与える影響の評価に基づき、開花噴流の実用化に向けた従来の方法に代わるより簡便な方法の考案と検証の実施、(ii)多数の衝突噴流の場合、壁面に平行に噴流を振動させる制御では前年度の検討結果から、さらなる伝熱特性の均一化をすすめるため、通常の制御入力パターンとして採用される正弦波とは異なる新たな入力パターンの導入や、振動させる方向の変更など噴流自体の移動方法に関わる新たな制御手法の検討の実施、(iii)液体噴流の制御については複数の噴流が干渉しあう場合の液体噴流についての検討など、以上の3項目について課題を掲げた。(i)については前述の研究実績の概要のとおり、従来の方法による開花噴流の回転周期や脈動周期の制御パラメータに対する影響を具体的に調査し、提案する傾斜回転制御と脈動を組み合わせた新たな方法のもとで制御パラメータを変化させ混合特性を比較、提案する方法の有効性を明らかにした。(ii)については、新たな制御方法について検討しその検証は次年度に実施することとし、入力パターンについての検討に関しては、機械学習による単独衝突噴流の伝熱制御を実施した結果、新たな制御入力パターンを見出すための課題解決に道筋をつけた。(iii)については前年度検討した入り口条件に速度差を与える方法に対しスリットを設けることで簡便に実現できる方法を検討した結果、スリットで仕切られたことにより複数噴流が実現され、それらが干渉し合うことで効果的な微粒化促進が実現される可能性を見出した。以上から、前年度の成果を反映した方策に対し、概ね有意義な結論が得られていることから総合的に(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
単独の自由噴流の場合、傾斜回転制御の有効性が確かめられており、さらに混合性能の向上を引き出すための制御パラメータが制御特性に与える影響を検討する。また、傾斜回転制御を利用した場合の衝突噴流による伝熱特性の均一化に対する検討についても実施、従来の方法による開花噴流の場合と比較し、衝突噴流への適用の可能性を調べる。多数(2本)の自由噴流の場合では、個々の噴流制御に脈動制御を導入し、脈動制御間の位相差を設ける方法や各噴流を間欠的に噴出させる間欠制御の検討にすでに着手しており、それらの制御パラメータに対する混合特性の評価を行う。伝熱の均一化に向けた多重衝突噴流の制御では、振動制御による制御の有効性が見出されており、さらに性能向上させるための、衝突距離や振動振幅の影響を明らかにし、制御パラメータが及ぼす影響の総合的な評価や、振動させる方向の変更などの新たな制御方法の可能性について検討する。液体噴流についてもスリット化されたことによる多数噴流の干渉により効果的に微粒化されることを見出しているがさらに機能を発現するためのスリット幅が与える影響について検討する。これまで人為的なパラメータ入力によらない制御を実現するために機械学習として深層強化学習を導入し、2次元場における自由噴流の混合制御や衝突噴流の伝熱制御について機械学習の可能性を見出しているが、それをさらに多数噴流の制御に展開する。具体的には、2次元場での複数噴流の間欠制御や、複数噴流による伝熱の均一化に関する制御を行う。また、深層強化学習の学習アルゴリズムについては現在1つの方法で対応しているが、異なるアルゴリズムの導入による制御効果の比較から効果的な学習アルゴリズムを見出す。以上、研究目的を達成する上での未達成部分を完成させることで本研究に関する包括的な結論を得る。
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