研究課題/領域番号 |
19K04173
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
小原 弘道 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (80305424)
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研究分担者 |
松野 直徒 旭川医科大学, 医学部, 特任教授 (00231598)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 臓器機械灌流 / 移植医療 / 流れの可視化計測 / 近赤外計測 / 臓器再生 |
研究実績の概要 |
移植医療の課題のひとつが提供臓器の不足である.しかしながら,心停止後に摘出される臓器は血流停止にともない大幅に機能が低下する.機能低下した臓器は血流停止にともな う流動障害を示し,様々な障害が誘起され,機能不全となる.一方で,心停止後においても移植可能な臓器もあり,また,機械臓器灌流技術による臓器機能再生への期待も大きく,移植適用臓器数を拡大することを可能とする移植用臓器の評価技術の革新が求められている. 本研究では,臓器内に灌流液を灌流する臓器機械灌流技術を用い,機能再生臓器の定量的な評価技術確立のため,臓器深部の肝細胞の代謝も含め可視化可能な近赤外域の蛍光を利用するICG蛍光法と臓器内の時空間的温度分布情報から流動を評価する時空間温度流動計測法を融合し,ミクロ,マクロの計測を融合した臓器内流動代謝融合可視化法を提案する.当該手法によって,臓器内の門脈,肝動脈,肝静脈そして胆管の流動,代謝状況を評価し,臓器移植のための機能評価技術を確立する.具体的には,臓器灌流技術を用い,臓器深部の肝細胞の代謝も含め可視化可能な近赤外域の蛍光を利用するICG蛍光法と臓器内の時空間的温度分布情報から流動を評価する時空間温度流動計測法を融合し,ミクロ,マクロの計測を合わせて活用する技術によって移植前の臓器機能評価を可能とするものである.特に,本研究では 臓器内流動・代謝融合可視化法を用い三つの視点から解明し,評価技術を構築する.3つの視点としてA)温度,酸素消費に着目した臓器内流動・代謝特性の解明,B) 虚血再灌流障害臓器の流動特性評価, C) 胆汁流動に着目した脈管相互制御機構の解明をおこなう. 本年度においては,ヒトの肝臓に構造が近く,研究成果を臨床へのすみやかな展開が期 待されるブタ肝臓を用いて,マクロ(巨視的)に着目し,流動・代謝複合計測による流動・代謝特性検討をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では臓器内に灌流液を灌流する臓器機械灌流技術を用い,機能再生臓器の定量的な評価技術確立のため,臓器深部の肝細胞の代謝も含め可視化可能な近赤外域の蛍光を利用するICG蛍光法と臓器内の時空間的温度分布情報から流動を評価する時空間温度流動計測法を融合した臓器内流動代謝融合可視化法を提案,評価する.当該年度は,臓器内に灌流液を灌流する臓器機械灌流技術を用い,機能再生臓器の定量的な評価技術確立のため,マクロ(巨視的)な視点からの評価をおこなった.臓器深部の肝細胞の代謝も含め可視化可能な近赤外域の蛍光を利用するICG蛍光法と臓器内の時空間的温度分布情報から流動を評価する時空間温度流動計測法を融合するにあたり,それぞれの手法に関して,基本的な特性を評価するとともに,融合に向けての検討をおこなった.実験は,温阻血時間を有するブタ肝臓を用いた実験を中心におこなった.具体的には臓器機械灌流システムを用い温阻血時間の無い臓器(温阻血時間:WIT0)と心停止1時間後に摘出する条件の厳しい臓器(WIT60)を比較することで,臓器機能の喪失と各種後臓器内不均一流動分布特性の解明,虚血再灌流障害下の流動特性評価,脈管相互制御機構の解明を行った.温度,酸素消費に着目した臓器内流動・代謝特性の解明,虚血再灌流障害臓器の流動特性評価に関しては,臓器内流動・代謝融合可視化法を用いた画像情報を,統合的に評価し,流動因子,代謝因子と合わせて評価検討した.特に,流動時に形成される温度分布画像,ICG分布画像を個別に詳細評価するのみならず,代謝因子との検討をおこなった. また,胆汁流動に着目した脈管相互制御機構の解明に向けて,基礎となる胆汁の流動特性を,pH,密度,レオロジー特性を評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,当初の計画をふまえて,次年度ミクロ(微視的)流動・代謝複合計測による流動・代謝特性検討,次時年度:マクロ・ミクロ融合流動・代謝複合計測による評価技術実装に向けて研究を実施する.臓器内に灌流液を灌流する臓器機械灌流技術を用い,機能再生臓器の定量的な評価技術確立のため,臓器深部の肝細胞の代謝も含め可視化可能な近赤外域の蛍光を利用するICG蛍光法と臓器内の時空間的温度分布情報から流動を評価する時空間温度流動計測法を融合した評価手法の確立するためにはマクロスケールでの当該年度の成果をふまえたミクロスケールの実験もおこない,総合的な技術確立に向け評価検討をおこなう.また,継続してブタを用いた大動物実験においてミクロスケールに着目した実験をおこなうに合わせマクロスケール実験をおこなうとともに,ラットを用いた小動物実験,解析モデルによる評価を有機的におこなっていく.研究実施環境の状況もふまえつつ,実験動物を用いない流動をモデル化した実験環境なども導入し,計画をサポートできる体制下での実施も検討をしている.
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