臓器移植は免疫抑制剤や手技,管理技術の向上によって確立された医療になっている.しかしながら世界的に提供臓器の不足はおおきな課題である.中でも,日本においては人口比率からの臓器提供数は非常に少なく医療的な側面のみならず社会的,技術的な側面からの課題解決が必要不可欠になっていている.このような背景の中,日本においても提供の可能性の高い心停止後に提供される臓器を移植につなぐための技術確立が求められている.心臓停止により血流が停止することで酸素供給を受けられなくなった臓器は流動障害を示し,あわせて様々な障害が誘起され,臓器機能を喪失する.こうした臓器に対して血管を通じて積極的に灌流液を流すことによって,臓器の機能保存,回復,評価を行うことが可能であり,こうした技術のための臓器機械灌流への注目がある.さらに機械臓器灌流技術は体外での臓器機能の蘇生や再生への期待もあり,これらをふまえた移植適用臓器数を拡大に寄与するための移植用臓器の評価技術の革新が求められている. 本研究では,肝臓に着目し臓器の機能再生臓器の定量的な評価技術確立のための臓器機械灌流技術を提案し,その評価技術を確立することを目標として実施した.臓器の機能評価手法として臓器深部の肝細胞の代謝も含め可視化可能な近赤外域の蛍光を利用するICG蛍光法と臓器内の時空間的温度分布情報から流動を評価する時空間温度流動計測法を融合し,ミクロ,マクロの計測を融合した臓器内流動代謝融合可視化法を提案した.当該手法によって,臓器内の門脈,肝動脈,肝静脈そして胆管の流動,代謝状況を評価し,臓器移植のための機能評価技術を確立への基礎的な知見を整理することができた.本研究ではヒトの肝臓に構造が近く,研究成果を臨床へのすみやかな展開が期待されるブタ肝臓を用いて,流動・代謝複合計測による流動・代謝特性検討をおこなった.
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