研究課題/領域番号 |
19K04174
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
横川 敬一 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 客員研究員 (30573597)
|
研究分担者 |
福田 常男 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30336763)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | すべり流 / 排気方程式 / 中間流 / 粘性流 / 分子流 / 分岐圧力 |
研究実績の概要 |
研究や産業界において真空排気は必須で、科学的知見、工学的技術は蓄積されている。しかし、大気から低・中真空領域への真空排気時の気体のふるまいは、排気時間を律速し、到達圧力や作業能率に影響するにもかかわらず、未調査、未解明の領域がある。特に、粘性流から分子流へ遷移する領域に、新たな境界圧力として「分岐圧力」の存在や、圧力 P が 1/t に比例するふるまいについての理論的解釈がある。我々は、真空排気時の気体のふるまいを詳細に計測し分岐圧力と圧力の時間に対する逆比例を明らかにし、この理論的解釈を裏付けた[1]。そしてさらに、この領域付近の精密な圧力測定や速度分布の計測により、未調査分野である「すべり流」の振る舞いを明らかにし、理論解釈を確立させ、流体力学の基礎理論に組み込んでいくことを目的とする。さらに、このすべり流は水素ガスの高圧圧縮機の高速流においても発生すると考えられており、この「すべり流」の発生機構とそのふるまいの詳細は、代替えエネルギーとして期待されている水素の安全管理上必要な基礎データとなると考える。 この目的の達成のため、2019年度は、「すべり流」に特化し、その発生圧力領域を一本の真空計でカバーできるように新たな隔膜真空計を導入して、これに合わせ圧力緩衝容器、圧力測定ポートを加え実験に臨む。特にスクロールポンプの到達真空度に近い低圧力の領域において、排気流量が一定であることを確認できるよう流量検知装置の開発を考えている。 [1] 横川敬一, 瀬戸泰平, 福田常男, “低・中真空領域における排気方程式の検討”, Vacuum and Surface Science, 61 (2018) 20.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は実験装置の改良、再構築を目標としている。従来の装置の管路の入り口、出口に整流および圧力精密測定のための緩衝容器さらに、スクロールポンプの後ろに流量を監視するために微小流量計を考案し設計、製作する。 使用するサファイヤ隔膜真空計は大気圧からすべり流の発生領域に入る少し前から連続して精密に測り取れるレンジのものを選定し、これに合わせ緩衝容器の形状、寸法、材料を決定し、設計、部品、材料の購入を行った。製作は夏に始まり、2020年3月に2台完成した。 ここで、緩衝容器に設置する隔膜真空計のプローブの位置は、測定絶対圧や圧力変化に対する反応速度に有意に反映されると考えられ、この真空計の取り付け部の設計は慎重に進めてきた。今回の探索は、圧力の時間依存性であることから、この最適化は測定後も続くと考えており、取り付け部の形状や寸法で調整の効かない場合、設計変更、再製作もありうると考えている。 計測、解析については、設計、測定、解析用パソコン、ソフトの選定、購入、各ソフトのセットアップを同時に進めてきている。 緩衝容器の完成に伴い圧力計、電圧計、計測、解析用パソコンソフト各機器の立ち上げ、接続作業へと現在進めてきている。 1 kPa以下におけるスクロールポンプの排気速度が低圧に向けて正確に一定であることを確認するための流量計測については既存の計測器では対応できず、キャピラリーを持いた微小流量検知装置を考案し試作、設計へと進めてきている。
|
今後の研究の推進方策 |
4月初旬に計測機器オプション、不足部品の発注を終えており、当初予定していた必要物品の調達は終わる。新コロナウイルス感染症の終息後、実験手順は次のように進める。①圧力計取り付けポート部設計、製作、最適化 ②真空容器、緩衝容器ベーク作業 ③真空容器に管路、緩衝容器を接続しスクロールポンプ、窒素ボンベの取り付け ④計測機器(真空計、温度計、流量計)の接続 ⑤計測ソフトの構築 ⑥流量検知装置の製作 ⑦試運転、流量検知装置の接続 ⑧計測ソフトフリーランでのバグ取り ⑨圧力計、温度計、流量計の較正、流量確認 ⑩試験測定 測定開始。 データが取れ次第、発表、論文の準備に入る予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
定められた予算内で必要十分な性能の機器を揃えるために、価格や機種を十分吟味、選定し計画的に購入してきた結果、355円の端数が生じてしまった。
|