様々な微細加工プロセスで発生する種々の膜厚ムラを回避抑制するための最適条件を数値シミュレーションによって効率的に探索できるようにすることを最終目標としている。 従来の方法で課題であった①時間発展計算に時間を要すること、②計算に必要な塗膜の物性値の測定・入手が困難なことを解決するために、①支配方程式を教師とした機械学習を導入して高速に膜厚ムラを予測する枠組みを構築し、②これをもちいた新たなデータ同化法を構築して塗膜の物性値を効率的に推定できるようにすることを目指している。 2020年度までの研究では、空間4階微分を含む液膜流れの支配方程式に対してPhysics-Informed Neural Network(PINN)を適用し、有効に機能することを示した。また、従来のPINNでは初期条件を変えた場合は再学習が必要であったが、初期条件をPINNの入力データとして取ることで初期条件可変なPINNを構築した。このPINNを用いた新たなデータ同化法を提案し、塗膜の物性値予測の問題に対して有効性を検証した。 2021年度はPINNの学習効率を向上させることを目指し、Convolutional Neural Networkや転移学習の枠組みの導入を試みた。いずれの方法もある程度の学習効率向上の効果が確認された。PINNを用いたデータ同化法による物性値予測については、実観測データを用いた検証を行うため、測定装置の構築に注力した。妥当性検証については、コロナウィルスの影響で実験ができない期間があったことで予定より遅れが生じ、研究期間を1年延長した。 2022年度は、前年度に構築した測定系を用いて実観測データを取得し、PINNを用いたデータ同化法によって十分な精度で表面張力を同定できることを確認した。
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