研究課題/領域番号 |
19K04182
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
福岡 寛 奈良工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (40582648)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 圧縮性流体 / 超音速噴流 / 衝撃波 / 反射衝撃波 / 閉じ込め / BOS法 / 可視化 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
本研究では,工業,新エネルギー,材料開発で重要な課題である,衝撃波の多重閉じ込め現象を制御する壁面表面形状の設計指針の獲得と、その実験的実証を行う.噴流誘起衝撃波の壁面-噴流先頭間反射による多重閉じ込め現象を,時間分解観測することで,衝突平板壁面の形状と閉じ込めの効率の関係を明らかにし,圧縮性流体のシミュレーションにより閉じ込めが起こる条件での圧力・密度・速度を調べ,閉じ込めに必要な物理条件を明らかにする. 当該年度は閉じ込めに必要な物理条件を明らかにするために,衝撃波の物理条件を変えることができると考えられる凹型形状の反射板を用いた測定システムの立ち上げを行った.本システムには反射板の壁面静圧を光学系のトリガーとすることで微弱な衝撃波を効率よく取得することを可能にした.これにより凹型形状の反射板で反射した衝撃波,噴流と衝撃波の衝突過程,さらに凹型反射板の焦点付近に収束する衝撃波の撮影に成功した.収束に向かう衝撃波および収束後の広がる衝撃波が噴流に衝突した場合,反射板における壁面静圧に変化が現れることがわかった.これは壁面形状を変化させることで,衝撃波の特性を変えることができたことを示しており,今後,閉じ込めの物理条件を詳細に調べる上で重要である. 実験および2次元計算で得られた基礎的なデータをもとに,曲率を持った板で反射する衝撃波の時間・空間的な挙動を詳細に調べるために3次元の数値計算モデルの構築を中心に行った.数値計算には,汎用流体解析ソフトであるANSYS Fluentを採用し,三次元圧縮性ナビエストークス方程式を解くことで行った.以上のように衝撃波の閉じ込めを制御する壁面表面形状の基礎となる知見が得られ,数値計算を行う準備が整った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の研究は,やや遅れている.当該年度は,閉じ込め現象解明に向けての実験的アプローチとして,衝撃波及び噴流の時間・空間的な解明に向けて,曲率を持った反射板の製作,計測システムの構築および凹型の反射板を用いた実験までを目標にし,その構築および実験の実施が完了した.製作については,曲率を持った2つの凹型の反射板の加工が完了した.計測システムは,圧力センサを可視化系のトリガーとした系が完成した.シュリーレン法における実験では,曲率を変えることで衝撃波の挙動を変えることに成功した.一方,実験装置の製作および実験時間の確保が難しく,複数のパラメータによる実験は実施できなかった.実験時間確保の難しさを緩和するため,前倒ししてスタートした数値より,早期に課題が発見できており,このため計画全体としては,おおむね順調とも言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進捗方策は,これまでの研究によって衝撃波の収束過程による特性の違いがわかったため,その影響が「閉じ込め現象の空間分布・寿命・噴流の速度および密度」に与える影響を明らかにするために,実験的可視化および壁面静圧計測により調べる.実験全体としては当初の計画よりも遅れているため,前倒し実施できているシミュレーションの結果を合わせてより深い考察を加える.さらに,今後新しい曲率を持つ反射板を設計する場合においても,予めシミュレーションを実施し,形状設計にフィードバックすることで効率化を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
【現在までの進捗状況】に記したように当初の計画よりも多くの時間をシミュレーションに要している.その結果,当該年度に予定していた光学系の選定に必要な実験が後回しになったことが原因である.
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