研究課題/領域番号 |
19K04186
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
上野 和之 岩手大学, 理工学部, 教授 (20250839)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 風洞 / 磁気支持 / 空気力 / 動安定 |
研究実績の概要 |
空中を不安定運動する物体(航空機・宇宙機・スポーツの変化球など)のまわりの流れを解明するための風洞模型用磁気支持装置の開発を進めた。永久磁石を内蔵した風洞模型を磁場によって浮上保持しつつ、風洞気流中でピッチ角変化と揚力方向並進運動の2自由度自由運動を可能にすることが目的である。この磁気支持装置が完成したなら、空気力を反映した模型の2自由度運動を風洞内で詳しく観察・計測することが可能になる。これは通常風洞では不可能な実験であり、空気力学研究に大きく貢献すると期待される。 2019年度にはレーザー変位計による風洞模型の位置検出を行い、それを使って気流中風洞模型の安定浮上を達成した。2020年度は得られた計測データを詳しく調べ、風洞模型の運動に影響を与えている空気力について考察を進めた。その成果を2020年10月に開催された Seventeenth International Conference on Fluid Dynamics で発表し、2自由度運動浮上を可能にする風洞模型用磁気支持装置の有用性を主張した。この講演会での討論を踏まえた原著論文を執筆中であり、学術誌に投稿する予定である。 2020年度の新しいステップとして、模型の位置検出方法を変更した。これまでのレーザー変位計からラインセンサーカメラを使った画像式位置検出システムに置き換え、気流中風洞模型の安定浮上を達成した。この成功により、模型の運動範囲が大きくなっても位置検出を継続できるようになった。風洞の風速を 8 m/s 程度に上げたときの模型の動きは当初予測を超える激しい運動であり、空気力の動的成分の重要性およびそれを研究するための本実験装置の有用性を改めて認識した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、ラインセンサーカメラを使った画像式位置検出システムの開発に取り組んだ。当初はカメラと同じ側に照明器具を設置して位置検出を試みた。その後、次のような要求を満足するために設計を見直した:(1)光量を確保し露光時間を短くしてデータサンプリング周波数を上げる、(2)模型が前後運動したときの視差変化に起因する位置検出誤差を十分に小さくする、(3) 取得画像に生じる中間明度の拡散領域を十分に狭くする。これらを達成するために、テレセントリックレンズ(画角が0°のレンズ)をカメラに装着し、平行光線照明によるバックライトで模型の影を撮影した。その結果、模型の運動範囲が大きくても十分な精度と十分なサンプリング周波数で模型位置を検出することに成功した。 この新しい位置検出システムにより、4 m/s までの風速で4分から30分程度の長時間の2自由度運動計測が可能になった。また、8 m/s までの短時間運動実験にも成功した。 以上のように、研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ラインセンサーカメラによる位置検出がとてもうまくいったため、風洞模型の運動範囲が大幅に広がった。その結果風洞の気流幅を超える運動が発生し、実験停止となること増えた。これを解決するために風洞の150×150mmの吹き出しノズルを新しいものに交換し、80×240mmの長方形断面の風洞気流に変更する計画である。これにより模型の運動範囲がさらに広くなる。また、風洞ノズル改造に合わせて永久磁石と継鉄で構成される開放型磁気回路の改良も進め、模型が気流範囲から逸脱しないように対策をこうじる。 ラインセンサーカメラによる位置検出はフィードバック制御により模型をxz平面内に保持するためのものであり、検出される位置はy座標である。いっぽう、動的風洞実験の模型のxz平面内の運動と姿勢は、磁気支持装置とは独立したモーションキャプチャシステムを使って計測されている。実験可能な風速が上がったことによりこれまで使っていたモーションキャプチャシステムのデータ欠落頻度が上がってきた。これを解決するために、今後はモーションキャプチャシステムの信頼性向上およびサンプリング周波数を上げることを試みる。
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