空中を不安定運動する物体(航空機・宇宙機・スポーツの変化球など)のまわりの流れを解明するための風洞模型用磁気支持装置の開発を進めた。永久磁石を内蔵した風洞模型を磁場によって浮上保持しつつ、風洞気流中でピッチ角変化と揚力方向並進運動の2自由度自由運動を可能にすることが目的である。この磁気支持装置により、空気力を反映した模型の2自由度運動を風洞内で詳しく観察・計測することが可能になった。これは通常風洞では不可能な実験であり、空気力学研究に大きく貢献する。 2019年度にはレーザー変位計による風洞模型の制御位置検出を行い、それを使って空気力を反映した動的風洞実験を実現した。 2020年度は得られた計測データを詳しく調べ、風洞模型運動に影響を与えている空気力の考察を進めた。その成果を2020年10月に開催された Seventeenth International Conference on Fluid Dynamics で発表し、2自由度運動浮上を可能にする風洞模型用磁気支持装置の有用性を主張した。 2020年度には模型の制御位置検出方法をラインセンサーカメラを使った画像式位置検出システムに置き換えた。この成功により、模型の運動範囲が大きくなっても制御位置検出を継続できるようになった。風洞の風速を 8 m/s 程度に上げたときの模型の動きは当初予測を超える激しい運動であり、空気力の動的成分の重要性およびそれを研究するための本実験装置の有用性を改めて認識した。 2021年度は模型運動を計測するモーションキャプチャシステムのソフトウエアとカメラをより信頼性の高いものに交換し、追加実験を実施した。その結果から、大気圏再突入カプセルの動的不安定振動を特徴づける空力微係数を同定した。また、スモークワイヤ法による予備的な可視化実験を行い、空気力を反映した動的風洞実験の有用性の認識を深めた。
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