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2020 年度 実施状況報告書

微小流路でのナノ繊維静電配向機構の解明による革新的セルロース単繊維創製法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 19K04187
研究機関東北大学

研究代表者

高奈 秀匡  東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (40375118)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードセルロースナノファイバー / 電場応答 / 数値シミュレーション / 静電配向 / 伸長流 / 混相流
研究実績の概要

植物繊維をナノレベルまで微細化することにより得られるセルロースナノ繊維(CNF)は,軽量でありながら高強度、低熱膨張等の優れた機械特性を有する環境適合型新素材であり,カーボンニューラル材料であることから,脱炭素社会の早期実現に貢献する新素材として,大きな注目を集めている。近年,CNFを再合成することにより創製される新素材としてのセルロース単繊維の研究が精力的に進められている。これまでの研究から単繊維の内部構造が材料特性に大きく影響することが明らかとなっており,CNFを軸方向に配向し,高い配向度を実現することにより,アラミド繊維と同程度の比弾性係数,かつガラス繊維と同程度の比強度を有するセルロース単繊維を創製することが可能となる。しかしながら伸長流による従来の配向法では,十分なCNF配向が得られず,セルロース本来の優れた材料特性を有するセルロース単繊維を創製することが難しかった。
そこで本研究は,伸長流動場による配向に静電場配向を重畳した革新的配向制御法を確立し,微小流路でのナノ繊維静電配向メカニズムを明らかにした上で,セルロース本来の材料特性を有する強靭なセルロース単繊維を創製することを目的とする。
本年度においては,昨年度に構築した繊維配向モデルに基づく数値シミュレーションにより,主流に対するシース流の流入角度が伸長流動場に与える影響を明らかにし,流路形状を最適化し,繊維配向に対する主流に対するシース流の最適流量比を明らかにした。得られた最適条件の下で繊維創製実験を行い,電場印加により引張強度および靭性がそれぞれ63%および120%増加する顕著な材料特性の向上効果が得られた。本結果は,交流電場と伸長流動場によるCNF配向制御により,ほぼ完全配向が実現されたことに起因することがXRDの結果から示され,本創製法の有効性が明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度おいては,昨年度に構築した繊維配向モデルに基づく数値シミュレーションにより,流路形状および流量比の最適化に成功し,得られた最適条件の下で単繊維創製実験を行った結果,電場印加により単繊維の顕著な材料特性向上効果が得られた。本成果は,当該分野において権威のある国際学術誌であるACS Applied Materials & Interfaces(IF = 8.795)に掲載されるとともに,日本経済新聞および日経クロステック,産業技術総合誌である月刊JETI(4月号)に掲載されるなど,メディアからも大きな期待と注目を集めた。
以上のことから,本研究課題の進捗は当初の計画以上に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

今後は,個々のセルロース繊維に対する回転および並進に関する運動方程式を解くことにより,繊維間の相互作用を考慮したシミュレーションを行い,電場および流動下における繊維配向過程をより詳細に解析する。さらに,繊維長分布を考慮したシミュレーションを行い,繊維長分布が配向制御に与える影響を明らかにする。また,米国ワシントン大学との共同研究として,得られた単繊維のナノ構造解析を進め,繊維長分布が単繊維内のナノ繊維配向度に与える影響を定量的に明らかにする。さらに,ラマン分光解析および赤外線分光法により,電場印加による化学的構造変化についても明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

理由:共同研究先である米国ワシントン大学のDichiara助教を訪問する予定であったが,コロナウイルス感染拡大の影響により訪問することが不可能となったため。

使用計画:来年度において共同研究先を訪問し,前年度の研究成果を報告するとともに,研究をさらに進化させるべく綿密な研究計画の策定と討論を行う予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (7件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] University of Washington(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Washington
  • [雑誌論文] 伸長流動場を用いたナノ繊維配向に与える流路形状効果2021

    • 著者名/発表者名
      福森 賢,高奈秀匡
    • 雑誌名

      混相流

      巻: 35 ページ: 134-141

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Field-Assisted Alignment of Cellulose Nanofibrils in a Continuous Flow-Focusing System2020

    • 著者名/発表者名
      Wise Heather G.、Takana Hidemasa、Ohuchi Fumio、Dichiara Anthony B.
    • 雑誌名

      ACS Applied Materials & Interfaces

      巻: 12 ページ: 28568~28575

    • DOI

      10.1021/acsami.0c07272

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] セルロース分散流におけるナノ繊維の電場配向制御特性2021

    • 著者名/発表者名
      薄井拓巳, 佐藤瞭, 高奈秀匡
    • 学会等名
      日本機械学会東北支部第56期総会・講演会
  • [学会発表] 伸長流動場を用いたナノ繊維配向に与える流路形状依存性2020

    • 著者名/発表者名
      福森 賢, 高奈 秀匡
    • 学会等名
      日本機械学会 第98期流体工学部門講演会
  • [学会発表] Multifunctional hybrid filaments comprising aligned nanocellulose and carbon nanotubes synthesized by a field-assisted flow focusing method2020

    • 著者名/発表者名
      Anthony Dichiara, Heather G. Wise, Hidemasa Takana
    • 学会等名
      20th Int. Symp. on Advanced Fluid Information
  • [学会発表] Response Characteristics of Cellulose Nanofibril under AC Electric Field during Flow Focusing2020

    • 著者名/発表者名
      Hidemasa Takana, Mengfei Guo
    • 学会等名
      20th Int. Symp. on Advanced Fluid Information
  • [学会発表] Aligned Conductive Composite Filaments using Field Assisted Flow Focusing System2020

    • 著者名/発表者名
      Heather Wise, Hidemasa Takana, Anthony Dichiara
    • 学会等名
      17th Int. Conf. on Flow Dynamics
  • [学会発表] Numerical Simulation on Orientation Control of Cellulose Nano Fibril by Electric Field during Flow Focusing2020

    • 著者名/発表者名
      Hidemasa Takana, Ryo Sato
    • 学会等名
      17th Int. Conf. on Flow Dynamics
  • [学会発表] ナノ繊維配向における流路形状依存性に関する数値シミュレーション2020

    • 著者名/発表者名
      福森 賢, 高奈 秀匡
    • 学会等名
      混相流シンポジウム2020
  • [備考] 高奈研究室ホームページ

    • URL

      http://www.ifs.tohoku.ac.jp/takana/japanese.html

  • [備考] 電磁機能流動研究分野ホームページ

    • URL

      http://www.ifs.tohoku.ac.jp/jpn/crfrd_effdl.html

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公開日: 2021-12-27  

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