研究課題
本研究グループは、2020年、初めて、部分混和系粘性フィンガリングの実験研究を成功させ、部分混和系ではフィンガリング界面がトポロジカル変化する、すなわち、千切れ液滴を形成するという、完全混和系や非混和系とは質的に異なる特性を有することを発見した。この研究では、フィンガリング界面のトポロジカル変化は、部分混和性に由来して生じる相分離とその相分離の際に自発的に発生する液体の流れがその原因であることを提示した。このメカニズムの完全解明には、フィンガリング界面が千切れ液滴を形成する現象の実験結果を再現する数理モデルおよびその数値シミュレーションが必要とされていた。本研究では、従来知られている完全混和系粘性フィンガリングの流体力学方程式群に、相分離を表現できる最も単純なモデルである二重井戸型化学熱力学的自由エネルギー(図1)を組み合わせ、さらに、流れの自発的発生を表現するために、Korteweg力と呼ばれる力を流体力学方程式の外力項に付与した。なお、これらの効果(相分離とKorteweg力)は、2017年に報告された数値シミュレーション研究では、考慮されていない。この数理モデルでは、相分離の強さを、二重井戸型自由エネルギーのエネルギー最小値と二つの平衡濃度の差により表現することができる。また相分離が強いほど、Korteweg力が大きいことを仮定した。これらを変化させ、相分離がない条件(完全混和系)と異なる相分離の強度の条件で、数値シミュレーションを実行し、相分離の強度が大きくなると、粘性フィンガリングから液滴形成パターンに変化してゆくことを数値的に示した。これは、本モデルが先の部分混和系粘性フィンガリングの実験結果を再現でき、かつ実験で発見されたフィンガリング界面が千切れ液滴を形成する現象が、相分離とその相分離の際に自発的に発生する液体の流れによることを理論的に示すものである。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 4件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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