研究実績の概要 |
今年度は,近年提案されたアルミニウム-ガリウム-ヒ素(Al-Ga-As)とガリウム-ヒ素-シリコン(Ga-As-Si)で構成される半導体をミクロ領域で作動する Knudsen ポンプの駆動源に適用する可能性と流れの相似則について検討した。当該半導体は,Ga-As-Si素子をAl-Ga-As素子で挟み電圧を加えると,Ga-As-Si に安定した温度勾配がつく点に特徴がある。幅0.2μmのGa-As-Si素子をAl-Ga-Asよりも0.1μmほど高くした構造の半導体に,電圧を加えると,Ga-As-Siの片面(1μの高さの面)ともう片方の面に20mmK程度の温度差が生じるとされ,幅方向に生じる度勾配により熱ほふく流が発生し,常圧下で作動するポンプの駆動源となる可能性がある。この1ユニットの素子を幅1μm,長さ2μm~3μmの流路に複数ユニット,直列に設置したポンプシステムを想定し,2次元の流れ場にモデル化して数値解析を行った。常圧下における分子の平均自由行程は,0.067μmで,流路幅を代表長さに取ったKnudsen 数は,Kn=0.067となり,すべり流れの領域となることから,解析は連続流に速度すべりと温度ジャンプの境界条件を与えた手法を用いた。その結果,素子1ユニットを通過するごとに,熱ほふく流の影響で圧力が上昇し,Ga-As-Si素子がポンプの役割を果たすことが確認された。また,Ga-As-Si素子の間隔に最適な値があることなども確認された。更に,流れの相似則を確認するために,10,000倍にスケールを拡大した流れ場について,圧力を1/10,000気圧としてKn数を揃え,温度勾配を一致させて,DSMC法により解析を行った。その結果,温度勾配とKn数が一致すれば,相似則が成り立ち,システム内の流れの様子や,圧力変化などがほぼ一致することが確認された。 その他,最終年度のため研究の総括を行った。
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