鈍頭物体を過ぎるごく超音速気流においては鈍頭物体前方に強い衝撃波が発生しその背後の高温気流に物体はさらされる。これよりマッハ3を超える極超音速で巡航する将来の民間航空機では革新的な熱防御の技術開発が望まれる。本研究では極超音速の空力加熱を解決するアクティヴな冷却法を数値解析によって検討した。最高温度に達する淀み点近傍から亜音速の逆方向ジェットを噴射するフィルム冷却では、2次元の数値計算では9割という極めて高い冷却効率が確認されたが、3次元計算ではノズル近傍で生じるレイリー・テーラー不安定からさまざまな不安定現象(ケルビン・ヘルムホルツ不安定、剥離泡における乱流へのバイパス遷移など)が引き起こされる。乱流化によって高温気体とジェットの冷媒の混合は促進され、冷却効率は4割から6割程度の間を変化した。別の冷却方法として物体の多孔質表面からの亜音速吹き出しによる染み出し冷却の二次元数値解析による検討を行ったところ、逆方向ジェットを使ったフィルム冷却と同程度の冷媒の使用でほぼ100パーセントの冷却効率が達成されるという非常に有望な結果が得られた。2次元のフィルム冷却の場合にはケルビン・ヘルムホルツ不安定が生じ、これが完全な熱防御を妨げたが、染み出し冷却では不安定が生じなかった。現在、3次元計算における確認を進めている。本研究で行った3次元数値計算は研究代表者が開発した衝撃波捕獲スキームを使った陰的LESである。本研究では同解法の乱流解析における性能評価も進めている。現在までのとこと、等方一様乱流の問題の空間2次精度の計算で、コルモゴロフの5/3乗則が低波数領域で確認されている。高次の多項式近似を用いることで同法則に従うエネルギースペクトル領域を高波数にまで拡大する試みを行なっている。
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