研究実績の概要 |
持続可能な循環型社会の実現に向け,再生可能エネルギーの導入促進が不可欠である.特に,風力発電は発電コストが低く,エネルギー賦存量が大きいため,最も有望な技術の一つであるである.風車の設計においては,風や運転条件などの膨大な組み合わせのシミュレーションを行う必要があるため,ロータの空力計算には比較的計算負荷の低い翼素・運動量理論(BEM)が使用されている.しかし,この手法では,タワーやナセルなどの固定部との空力干渉のモデルを開発する必要がある. 本研究では,将来の風車の大型化・低コスト化,ならびに,日本の周辺海域に膨大なエネルギー賦存量が期待できる浮体式洋上風力発電用に有望視されるダウンウィンド風車の技術課題であるロータ~タワー間の空力干渉(RTI)を包含する拡張BEM理論を開発した.これは,従来のBEM理論に,揚力線理論やポテンシャル理論を統合した,これまでにない新しいロータ空力解析理論で過去数十年間のBEMの枠組みを転換させる画期的なモデルである.これにより,少ない計算負荷で精度のよい応答解析を可能とするとともに,個別の現象に対する形状,翼特性,運転条件などの代表的な設計パラメータの個別の影響を明らかにすることにより,設計へのフィードバックが可能とし,より競争力の高いシステムが実現させる. 本研究では,さらに,それを空力弾性解析ソフトに実装し,風車の荷重や性能に対する各種設計・パラメータの影響を評価し,これらの空力干渉を考慮したダウンウィンド風車の設計指針を得る.さらに,社会的な普及・定着まで視野に国際エネルギー機関の国際共同研究プラットフォームIEA Wind, Task 40 Downwind Turbine Technologiesへ推奨方法案として提案を行った.
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