研究課題/領域番号 |
19K04197
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
丹下 学 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (70549584)
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研究分担者 |
大宮 喜文 東京理科大学, 理工学部建築学科, 教授 (10287469)
小野 直樹 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (20407224)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 液膜流 / 防災 / 流体力学 / 伝熱工学 / 建築工学 |
研究実績の概要 |
本研究は,建築物の延焼防止手法である壁面への散水システム}の最適化を背景に,壁面上の流下液膜による建築部材の受熱低減効果を定量化するために,輻射加熱壁面上の流下液膜を対象として,液膜形状・液膜内速度分布が乾き面発生に与える影響を解明することを目的とする.具体的には,(1) 流下液膜性状(液膜厚さ分布・液膜内速度分布)の光学的な方法による非接触・非定常な計測手法を確立した後,(2) 加熱条件下における液膜性状と乾き面発生との関係を明らかにする.これまでに,実際の火炎によって水膜の温度分布が縞状になることを実験的に確認し,水膜による徐熱割合を計測してきた. 2021年度は,加熱をしない状態で液膜を形成する装置を製作し,非点収差PTVという手法を用いて液膜内部の流速分布が計測可能であるという知見を得ることができた.具体的には,角度可変な調整機構を設計製作し,傾斜板の試験体として耐熱ガラスを用いて流体の循環系を構築した.次に試験流体に微細な粒子を懸濁し,粒子の奥行方向と粒子画像のアスペクト比の関係を求め,数mmの計測範囲を実現する光学系を構築した.また,比較的安価な産業用カメラで高速な流れの計測を行うために,赤・緑・青のLED照明を用いたマルチカラーPTVの制御系を製作し,動作確認を行った. 加熱条件で水膜厚さ分布に不安定性が生まれ,乾き面が発生するという実験事実の再現,および,メカニズムの解明については,研究の遂行が遅延しているため,2022年度,計画に従って研究を進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナによる入構制限があり,大学院生・学部生による実験の遂行に遅れが発生した.また,研究室に既存の高速カメラが故障し,高速に撮影する実験が不可能になったため,比較的安価な産業用カメラで高速な撮影を可能とする光学系を,計画外に新たに構築することとなった.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,研究計画に従い,「乾き面発生の詳細な条件探索と発生機構の解明」を目的として,放射パネルによって水膜を加熱し,筋状の乾き面を発生させる.現在構築中の計測系によって,乾き面発生地点の液膜内流速分布を計測・検討することにより乾き面の発生機構を解明する.また,加熱条件・水膜形成条件と乾き面発生との関係を求める.具体的には,さまざまな加熱量で実験を行い,どの程度の水量で乾き面ができるかを計測する.系統的に得られたこれらの実験結果から,部分的にも乾き面を発生させない最適な散水条件を加熱量の関数として求める. また,実社会へ研究成果を還元するため,「散水システムの受熱低減効果の検証」を目的として,散水システムの最適設計(受熱量と散水量との関係)手法を提案する.現状では,建築基準法や関連法令によって散水条件が経験的に決められているが,液膜形成条件や壁面形状・材質によっては十分な受熱低減効果が得られなかったり,反対に効率的な受熱低減が見込めるにもかかわらず,法令によって無駄な散水量を確保せざるをえない状況もある.本研究によって,流量・加熱条件をパラメタとして液膜性状・受熱低減効果が定量的に推測できるようになれば,効果的・効率的な散水システムの構築が可能になり,安全性を保ちつつ,散水量を低減できる可能性がある.これは,備蓄水量を他にも融通しつつ延焼を避けるべき大規模災害時などに,非常に有効に活用されるものと考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナによる入構制限があり,大学院生・学部生による実験の遂行に遅れが発生したため,次年度使用額が生じた.2022年度は,研究計画に従い,「乾き面発生の詳細な条件探索と発生機構の解明」を目的として,赤外線放射パネルによる加熱系を製作する.また,加熱実験に備えた実験系の改良(発生蒸気から光学系を保護する装置など)
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