研究課題/領域番号 |
19K04199
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
山本 剛宏 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (40252621)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 複雑流体 / ポピュレーションバランス方程式 / フロック形成流体 / セルロースナノファイバー / 粘弾性モデル / 数値流体力学 |
研究実績の概要 |
フロック形成流体のひとつであるセルロースナノファイバー懸濁液の粘度のフロック有効体積分率依存性をKrieger-Doughertyモデルで表現し,White-Metzner型の粘弾性構成方程式の粘度関数に取り入れることで,フロック形成流体の粘弾性モデルを構築した.本モデルでは,フロックサイズ分布の時間変化をポピュレーションバランス方程式を用いて計算している.そして,本モデルによりセルロースナノファイバー懸濁液が示すせん断粘度のshear-thinning性を表現できることが示された.さらに,White-Metznerモデルの緩和時間をモデルパラメーターとして弾性効果を表す第1法線法力差を記述できることが分かった.続いて,このモデルをベースに弾性率をフロックの有効体積分率の関数としたモデルを開発した.ここでは,White-Metznerモデルの弾性率関数にべき乗則モデルを適用した.これにより弾性率を通じて緩和時間のフロックサイズ分布依存性を取り入れることが可能となった.そして,緩和時間を一定にした場合とせん断レオロジー特性を比較し,せん断速度一定のせん断スタートアップ流れの流動初期における第1法線応力差の成長挙動に違いが見られることが分かった.さらに,本モデルの複雑な流れ場への適用として,本モデルを有限要素法ベースのマクロ流動解析プログラムに組み込んだHele-Shaw流れの解析プログラムの作成を進め,予備計算を行った.そして,その結果に基づき,プログラムの改良について検討をした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は,ポピュレーションバランス方程式を用いたフロックサイズの時間変化の計算結果をもとに,Maxwell型(White-Metzner型)の粘弾性モデルに粘度および緩和時間のフロックサイズ分布依存性を取り入れることで,フロック形成流体の新規の粘弾性モデルを提案した.そして,モデルのせん断特性を調べた.これらの成果は本年度の計画で中心となるものであり,今後の研究の基礎となるものである.さらに,研究成果の学術雑誌への投稿および論文採択に至っている.また,別に検討を行う,コンフィギュレーション・テンソルを用いた構成方程式の検討については,過去の研究成果の調査を進め,構成方程式構築のための検討を進めた.以上により,本研究はおおむね順調に進んでいるものと判断される.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,2019年度に作成したモデルを用いた数値シミュレーションを行い,モデルのレオロジー特性をさらに調べる.特に,フロックサイズ分布依存性のメカニズムやフロック形状を特徴付けるフラクタル次元の影響について検討を進める.フロック形成流体のレオロジーデータの収集については,適当なセルロースナノファイバー試料の入手が困難なため,文献によるデータ収集も検討する.さらに,コンフィギュレーション・テンソルを用いたモデルの開発のための理論の検討を進める.そして,最終年度に予定している複雑な流れ場への適用と数値解析に向けて,数値計算プログラムの開発を進める.また,これらのモデルを用いた数値流動解析の際の適用範囲,選択指針をまとめるためにデータを蓄積していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
解析に使用するワークステーションおよびデータ可視化ソフトに現有のものを使用することができたこと及び使用するソフトウェアの再検討のため,本年度の購入を見送り,次年度に購入することとしたため.
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