自動車,食品,医療などの分野において低流量で高い圧力が得られる小型で効率の高いポンプの出現が待望されている.流量が毎分数リットル程度の仕様では一般的に容積型と呼ばれるポンプが使用されるが,このポンプは内部の密閉度を高くするために部品同士が接触し,磨耗や摩擦熱による液体成分の変性,機構が複 雑で部品数が増すことによる装置の大型化などの問題がある.本研究は容積型ポンプの多くの問題を克服した低流量でも高い圧力を得ることができる高効率・小 型二重回転スクリューポンプの開発を目指す.特にこのポンプの小型化と高効率化を実現するために,主要部品のステータをマイクロ波成型機を用いて樹脂で製作し,樹脂ステータと金属ロータとのトルク伝達性能の向上とポンプ内部の隙間における漏れ損失の低減について実験と数値解析により明らかにすることが目的である.本研究では期間内に主に「ステータの材質がロータ回転トルクに及ぼす影響」,「ロータとステータの形状がポンプ性能と漏れ流れに及ぼす影響」について検討を行った. 最終年度はABS樹脂にくらべて摺動製が高いとされているPOM(ポリアセタール)を用いてマイクロ波成形機によってステータを1年掛かりで成形条件を変えて製作してきたが,冷却時の熱収縮率による形状変形を抑えることができずPOMによる製作を断念した.しかし,ABS樹脂による寸法精度の高いステータの作成には成功した.その結果,金属ステータに比べて質量が軽いことによりロータの回転に伴うステータの回転トルクが非常に小さくなり,また,漏れ量も減少したため,ポンプ効率を高くすることに成功した.しかし,流体の粘性が増すとステータの材質にかかわらず回転トルクが増すために効率がほとんど変わらなくなることが明らかとなった.これらの成果は日本機械学会にて発表した.
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