本研究では、従来の理論よりも広い適用可能範囲を持つ「拡張された熱力学(ET)」理論に基づき、衝撃波の解析を行った。特に、これまでに十分な解析がなされてこなかった不連続面(sub-shock)をともなう強い衝撃波に注目して解析を行い、その性質を明らかにすることを目的として、5年間の研究を行った。得られた主な成果は以下の通りである。 (1) レーザー照射や爆発などによって生じる球面衝撃波や円筒衝撃波について、多原子分子気体に対するET理論に基づき解析した。相似解を記述する方程式系を導出して数値解析を行い、その性質を明らかにした。得られた相似解は、Euler方程式系に基づく従来のSedov-von Neumann-Taylor解を特別な場合として含んでおり、動圧の影響を取り込んだより精密なものと位置づけられる。 (2) 相似解の前提となる、「非常に強い衝撃波」の仮定が成り立たなくなるような、それほど強くない爆発にも注目し、球面および円筒衝撃波の時間発展を数値的に解析した。動圧の影響によって従来のEuler方程式系に基づく解と異なる振る舞いが得られる条件を定量的に求めた。 (3) 多原子分子混合気体中を伝播する衝撃波の破面近傍の構造について、それぞれの気体がEuler方程式系に従う場合の解析を行った。新しいsub-shock形成のシナリオを発見し、sub-shock形成のパラメータ依存性の完全な分類に成功した。 (4) 多原子分子混合気体中を伝播する衝撃波の破面近傍の構造について、それぞれの気体がET理論に従う場合の解析も進めた。本年度は、Euler方程式系で発見された新たなシナリオに着目しながらsub-shock形成のパラメータ依存性を完全に分類した。Euler方程式系の分類と比較することで、動圧の存在がsub-shock形成に与える影響を定量的に明らかにできた。
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