研究課題/領域番号 |
19K04210
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金子 暁子 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40396940)
|
研究分担者 |
阿部 豊 筑波大学, システム情報系, 教授 (10241720)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | マイクロバブル / ベンチュリ管 / 微細化 / 溶存ガス濃度 / キャビテーション |
研究実績の概要 |
縮小拡大管内の特異な流路形状により混相流動場において著しいせん断流動場や超音速流動場が生じる。このような流動場により引き起こされる力を用いて気・液・固体を粉砕し微粒化する装置の実用化を目指している。 2020年度は管内のせん断応力場、および圧力変化と物体の微粒化の相関の解明として、管内で生じる複雑流動現象であるキャビテーションの影響に加えて、気泡崩壊挙動を定量評価し、生成気泡径への影響を調べた。 高速度カメラによる管内流動の可視化観察、圧力分布、ボイド率分布の計測によって定在的な流動特性を明らかにした。また、液単相流条件においてはベンチュリ管喉部においては流速の増加によって喉部で圧力が低下することでキャビテーションが発生することを確認した。さらに、キャビテーションの発生によって圧力損失が増大し,キャビテーション気泡の消滅時に音波が発生することを示し、溶存酸素量がキャビテーションによる気泡発生量に寄与することを示した。気液二相流においてはボイド率の実測値と管内圧力分布から理論的に見積もったボイド率の差分がキャビテーションによって発生した蒸気である可能性を示唆し、発生蒸気の比率が高い条件において気泡がより微細化することを明らかにした。 これまでの先行研究においては,喉部で音速に達する条件や圧力波の発生条件などの入口条件による管内流動の変化が生成気泡径へ及ぼす影響について考察が深められてきた。本研究では,高気相流量条件では気泡の急収縮が生じにくくなることを示唆し、気泡崩壊時に計測された音圧が高い条件において生成気泡径が小さくなる負の相関があることを明らかにした。この相関関係から気泡の急収縮が生じる条件で気泡がより微細化することを示すと同時に、高気相流量条件においては気相の存在により急激な収縮崩壊が生じないことが気泡微細化を妨げる一因となっていることを示唆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、以下の2点に着目し研究を進めている。すなわち、(1) 定在的な圧力回復と過渡的な圧力伝播のメカニズムの解明、および、(2) 管内のせん断応力場、圧力変化、温度変化に伴う相変化と物体の微粒化メカニズムとの相関の解明である。 2020年度はキャビテーション現象と音波発生の相関についても定量的に示すことに成功し、さらに、高気相流量条件では気相の存在により気泡の収縮崩壊が生じにくくなり、気泡微細化を妨げる一因となることを示した。また、水中の溶存ガス濃度が発生気泡量に影響を及ぼすことを示した。これについては、水温の変化や水の脱気によりその影響を明らかにすることが可能と考えているものの、進展が少ない。これは2020年4月に入学予定で本研究を実施予定であった留学生の来日がCOVID-19の影響により半年以上遅れたことが一因である。その後、2020年11月に来日し、現在、研究に従事できている。本項目については2021年度に検討予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、以下の2点に着目し研究を進めている。すなわち、(1) 定在的な圧力回復と過渡的な圧力伝播のメカニズムの解明、および、(2) 管内のせん断応力場、圧力変化、温度変化に伴う相変化と物体の微粒化メカニズムとの相関の解明である。 (1)については、特にベンチュリ管気液二相流動場に着目し、キャビテーション現象と気泡崩壊現象の解明について、さらに実験を進める。気相流量比に対する音波の計測や気泡挙動の詳細計測結果に基づき、気泡崩壊のメカニズムを議論する。これは流動条件に対する生成気泡径分布に直結する議論になると考えられる。また、(2)の相変化への影響についても密接にかかわるものと考えられる。 (2)については、気相を主流とした氷生成の検討から、溶存酸素濃度の影響による発生気泡径の影響とキャビテーション現象、さらに気泡微細化挙動の解明を重点的に実施することとし、相変化の影響およびせん断流動場の微粒化への影響を調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はCOVID-19の影響により、参加を検討していた学会の中止、延期とそれに伴う旅費および学会参加費の支出がなくなった。また、4月入学を予定していた留学生の来日が半年以上遅れたため、来日してからの2020年度後半は、対面での打ち合わせが困難であった中、研究の進め方についての相談及び実験の引継ぎ作業等に追われ、研究の進捗に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。 2021年度は、主に、微細気泡発生メカニズムの解明に重点を置いて研究を実施する。特に、水中の溶存ガス濃度をパラメータとし、2019年度に明らかになった溶存ガス濃度による気泡収縮挙動と発生気泡径への影響について明らかにする。そのために液相を脱気するためのシステムを組み込む。現存する電気ボイラを実験装置に組み込むことを考慮し、耐熱タンクおよび配管を購入する。また、ヒーター等を購入し、溶存ガス濃度の調節を行う。さらに、パラメータを変えることによる気泡の崩壊現象の詳細観察のための光学系購入を予定している。また、オンラインおよびオンサイト(予定)で実施される国内学会および国際学会への参加を複数予定している。
|