研究課題/領域番号 |
19K04219
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
奥村 幸彦 香川大学, 創造工学部, 教授 (80262971)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アンモニア / 同軸噴流拡散火炎 / CO2フリー燃焼 / 水素キャリア / 低NOxバーナー / 乱流火炎 / 窒素酸化物 / 水素保炎 |
研究実績の概要 |
アンモニアはCO2 を排出しない,すなわち地球温暖化ガスゼロ排出の燃料である.しかしながら,アンモニアの火炎伝播速度は0.06 m/s以下であり,従来の炭化水素燃料(石油系燃料)と比較すると極端に低いため安定燃焼が困難であり,かつ強制燃焼させると大量のNOxを生成する.そこで本研究では,水素保炎によりアンモニアを安定燃焼させる新規バーナー(3重管構造)を製作した.3重管の内側1重管よりアンモニア,2重管から補助燃料の水素を3m/sで流し,最外管である3重管からの可変空気流速を 3m/sとした場合に同軸噴流拡散火炎が生成できる.加えて,バーナー中心から燃料流(1重管:NH3および2重管:H2)を3m/sで,3重管からの可変空気流(高速空気流)を3.0m/s以上~11.0 m/sでそれぞれ噴出した場合を3重噴流拡散火炎と定義する.特に高速空気流が8.0m/sの条件を乱流燃焼場における代表的な3重噴流拡散火炎と位置づける.以下に,3重噴流拡散火炎と同軸噴流拡散火炎の特性を比較した結果について示す. (1)3重噴流拡散火炎と同軸噴流拡散火炎の火炎構造(燃焼構造)が実験的に明らかにされた. (2)3重噴流拡散火炎では,高速空気流による乱流混合および反応促進された短い火炎が観測され,乱流場中においてNH3の安定的な燃焼維持(高負荷燃焼)ができる. (3) NH3/H2の予混合の方式と比較して,水素とNH3を別途にセパレートに配置させるバーナー設計方式の方が乱流拡散火炎をより安定に保炎できる. (4) NH3燃料周りを水素で囲み還元域を生成することにより,NOxは300ppm未満まで急減できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の一年間において実験に集中したために,学会発表および論文投稿はできなかったが,次年度に発表する準備が整っている.具体的には, ・奥村幸彦、"アンモニアの火炎構造に関する実験的研究:CO2フリー燃焼への検討",第30回環境工学総合シンポジウム2020(日本機械学会主催)、No.309,4 pages,2020年. ・坪田知大、松田直也、奥村幸彦、北野貴寛、堀司、赤松史光、"水素保炎型アンモニア乱流拡散火炎の燃焼構造"、第29回日本エネルギー学会大会講演論文集(日本エネルギー学会主催), 2 pages,2020年. ・ Yukihiko Okumura et. al., "Numerical simulation of ammonia burner with hydrogen flame stabilizer", Proceesings of 31st International Symposium on Transport Phenomena (ISTP31),2020 等の多くの国内・国際会議において発表する. 加えて,火炎構造の実験(化学種計測,温度計測,NOx計測等)および考察が終了し,大型シミュレーションへの計算環境も整った.シミュレーションには,東京大学情報基盤センターのスーパーコンピューター(Oakbridge-CX)を使用する.
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今後の研究の推進方策 |
今後、以下の(1)~(3)の研究を推進する. (1)NH3/H2燃焼(反応性熱流体)の数値計算を行う.解くべき支配方程式は以下の通りである. ・連続方程式 (Continuity equation),・ナビエ・ストークスの運動方程式 (Navier-Stokes equation→RANS),・エネルギー方程式 (Energy equation),・ 気体の状態方程式,・化学種保存式 (Conservation of a chemical species),・アンモニアの素反応式(Element reaction)を組み込む. (2)窒素酸化物(NOx)の生成・消滅機構の解明を行う.NOxの生成経路を判別するために,空気中N2については第三体としてのみ作用するとして(即ち,空気中N原子にマーカーをつけて区別した上で),Thermal NOxの生成を分離するプログラムにより解析を行う.加えて,窒素酸化物NOxの主要反応経路を明らかにする. (3)可変空気の流速変化による高負荷燃焼を検証する.乱流構造と着火・消炎の関係を解明し,NH3火炎の安定化機構(火炎維持機構)の解明を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目購入予定であった数値計算用ワークステーションを購入しなかった,かつ,実験にエフォートを費やしたためである.翌年度分に請求した金額と繰越金額を合わせて数値計算および追加実験に使用する.
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