研究課題/領域番号 |
19K04221
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
本田 逸郎 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (00229254)
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研究分担者 |
河南 治 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (20382260)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非共溶性混合媒体 / 沸騰 / 熱伝達 |
研究実績の概要 |
今年度は研究初年度として実験装置を設計・製作し、実験を実施した。実験ループは、タンク、ポンプ、流量計、予熱器、加熱試験部、凝縮器にて構成されている。加熱試験部は流路幅30 mm、流路高さ2 mmの矩形流路で、底面はアルミの伝熱ブロックとなっている。伝熱ブロックは流れ方向に7セクションに分かれており、それぞれ流れ方向に25 mmで、総加熱長さは175 mmである。試験流体には水とFC-72の組み合わせである非共溶性混合媒体を用い、流動沸騰実験を行った。試験媒体は予熱器によって所定の温度まで加熱し、加熱試験部に送られる。本実験では平衡温度から10 K低温に設定した。さらに、それぞれの流体の単一成分での実験も行い、それらの熱伝達の比較を行った.また、加熱試験部全体はCCDカメラで観察し、さらに下流部の3セクション(セクション5、6、7)は高速度カメラにて観察した。加熱試験部出入口における圧力と流体温度、加熱試験部の加熱ブロック内温度を10Hzにて計測した。 その結果、プール沸騰と同様に、非共溶性混合媒体の流動沸騰において、低熱流束域での優れた熱伝達や沸騰冷媒遷移特有の熱伝達特性が確認された.特に高熱流束域での流体挙動および熱伝達特性は、激しく沸騰する水単体とは全く異なり、非共溶性混合媒体では水の薄液膜蒸発によって高い熱伝達が得られることが確認された。この様相はFC-72と水の流量比によって変化し、非共溶性混合媒体の流動沸騰熱伝達において、最適な流量比が存在することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は装置の設計・開発を行う予定であったが、実験実施と貴重なデータを取得し、計画以上の進展が得られた。特に、高熱流束域での非共溶性混合媒体の流動様相は予想されなかったものであり、非常に面白い結果となった。 一方、沸騰冷媒遷移の閾値を不安定性解析から導出する方法については、まだ未完成である。今後、本解析にて実験結果を裏付けることが重要である。
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今後の研究の推進方策 |
実験は計画以上に進展しており、今後はさらに条件(流量比、流路高さ、熱流束)を多く実施し、非共溶性混合媒体の流動沸騰の沸騰様相と熱伝達について詳細に検討する。 また、沸騰冷媒遷移の閾値について実験的に導出しするとともに、不安定性解析による閾値算出のアプローチを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は研究室保有の装置類をできる限り用いて装置を製作し、より重要な装置購入に繋げたいと考えた。結果として、流動観察が非常に重要であることを認識し、より広範囲が観察できる高速度カメラを購入するため、次年度使用額として残金を有効活用することを計画している。ただし、高速度カメラは高額であるため、現在用いている高速度カメラでも十分なデータが取得できるよう、照明を工夫し、実験を行うアプローチも継続する。
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